新春特集=アナリストの視覚と死角、原油相場をどう見たか①
2021年の原油相場をどうみたか。新型コロナ感染動向が最大の注目材料だったことは、どのアナリストも否定しないだろう。2021年初めに想定したシナリオが実際どこまで合致したのか、あるいはしなかったのか。しなかった場合の要因は何か、視覚と死角を聞いた。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は、ワクチン接種の進展とともに相場は上向くと考え、実際にそうなったが、「想像以上に原油相場の上昇ペースが速かった」と語る。その要因として、欧州での天然ガス価格高騰やサプライチェーン問題、中国の電力不足などがインフレ懸念につながり、原油高にも作用したと指摘する。LNG相場とそれに関連した電力相場までは読み切れなかったという。個々の相場と相互作用の両面から市場を見る必要性がさらに増しているとも言える。
楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリストは、2020年末に2021年の60ドル定着を予想し、おおむねその想定内で推移したと語る。世界的な脱炭素の流れを受け、産油国が今後数十年で原油生産量を減らす動きが加速。産油国の経済を支えるため、原油単価を引き上げるシナリオは十分にあり得るとした。
一方、変異株の出現とマーケットの過剰反応、中国の景気減速、脱炭素化への動きが原油相場の引き上げ要因となることは予想外だったようだ。とくにクリーンエネルギー転換へのしわ寄せとして、投資家が石油関連企業への投資を率先的に行わなくなった結果、シェールオイル生産やアメリカ産原油生産が減少し、それらが供給逼迫感の台頭につながる悪循環となり、相場の押し上げにつながった。
また、LNGや水素の「低炭素」燃料需要の増加に対し、供給が追い付かず、既存の石油燃料の使用がかえって増えたことなどは想定外の出来事だったと指摘する。