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新春企画 「2019年のエネルギー相場をよむ」

2019/01/01 00:00

トランプ米政権が国際社会と相場を翻弄した2018年が終わり、新しい年が明けた。米国と中国の貿易戦争による世界経済の減速懸念に、米シェールオイルの生産増が重なり、節目とみられた50ドルの大台を割り込んだ国際原油相場。さらにカタールが石油輸出国機構(OPEC)からの脱退を表明するなど、サプライズ要因の多い一年だった。2019年は果たしてどんな年になるのか?リム情報開発は昨年末、著名アナリストやエコノミスト6人に、原油をはじめとするエネルギーの新年の相場見通しを取材した。原油の代替燃料としての地位が高まるLNG(液化天然ガス)と再生可能エネルギーの今後についても鋭く切り込んだ。

 

質問事項は以下のとおり。

① 2019年のWTI原油/ブレント原油の具体的なレンジを予想してください。

② 2019年の原油相場を左右する最も注目すべきポイントは何ですか?また、相場が予想レンジから逸脱しうる場合、どのようなサプライズ要因、ブラックスワン要因が考えられますか?

③ 2019年のLNG相場(北東アジア着の現物相場)見通しと、その背景を教えてください。

④ 世界で存在感が高まる再生可能エネルギーの一年後を予想してください。

⑤ 最後に、新元号元年となる2019年のエネルギー業界全体の見通しを「漢字一文字」で表し、その理由を解説してください。

(順不同)

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC) 野神隆之 首席エコノミスト

取材日:1218

   年間の予想レンジ WTI:4565ドル ブレント:5575ドル(1バレルあたり、以下同)

   【最注目】OPEC及び一部非OPEC産油国の減産方針

【その他】米国シェールオイル等原油生産状況、イラン原油輸出状況、世界経済状況と石油需要

【サプライズ要因】世界経済混乱(米中貿易紛争激化、英国の合意なしのEU離脱)、リビア及びベネズエラの政情混乱と原油生産急減、OPEC減産措置の混乱等

   年間の予想レンジ 711ドル/mmBtu 原油価格に概ね準拠、中国での天然ガス需要増加の一方で、LNG供給も増加すると見られることから、価格は範囲内での変動となると予想。

   回答なし

   「挟」

米国シェールオイル及びOPEC等生産状況、イラン問題、トランプ大統領、米国・中国・欧州等世界経済等で、エネルギー業界は「挟」まれる結果、身動きの取りにくい展開となるものと予想されることから。

 

ニッセイ基礎研究所 上野剛志 シニアエコノミスト

取材日:1218

   年間の予想レンジ WTI:4362ドル ブレント:5372ドル

   【注目ポイント】米政権の動き(イラン原油禁輸適用除外、OPEC批判の行方など)

【サプライズ要因】世界経済の急激な悪化

   回答なし

   再生可能エネルギーの普及が止まることはない。技術革新によって、想定外の新再生エネルギーが誕生する可能性も。

   「変」

2019年は米国経済のピークアウトや消費増税による日本経済の振幅など、景気変動の大きな一年になる可能性が高い。市場の観測も振れやすく、エネルギー価格の変動率も高まりそう。業界としては、例年以上に事業環境の変化への対応が求められそう。

 

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 芥田知至 主任研究員

取材日:1218

   年間の予想レンジ WTI:4070ドル ブレント:5075ドル

   【注目点】米中貿易戦争と対イラン制裁の行方。

【下振れ】英国が無秩序なEU離脱に陥ったり、イタリアの政局が混迷して、金融市場や世界経済が大混乱に陥った場合。

【上振れ】米中貿易戦争が解決に向かった場合や米イラン関係が一段と悪化した場合。

   回答なし

   回答なし

   「混」

英国のEU離脱、米中貿易戦争、米欧の政治リスク、米政局、中東情勢などすでに明らかなリスク要因だけでも情勢は混とんとしている。

 

野村證券 大越龍文 シニアエコノミスト

取材日:1218

   年間の予想レンジ WTI:47.562.5ドル ブレント:52.570.00ドル

   【注目点】OPEC、そしてOPECプラスの協調の行方。協調が続けば原油価格の下振れは避けられるが、OPECが崩壊すると、原油価格は大きく下振れへ。

   年間の予想レンジ 9.0012.00ドル/mmBtu

年間を通して一定の中国需要が続くため、支えられやすくなっている。ただし、中国の需要増加はある程度市況に織り込まれており、米国のLNG輸出も増えてきているため、大きく上昇する可能性も低下し、高値で安定した推移が続きやすくなっていると考える。

   先進国では一定の普及は進むと考えられる。ただし、原油価格が低位にあるため、発展途上国を含む世界全体では、それほど、普及が進むとは考え難い。一年程度の時間軸では、依然として化石燃料がエネルギーの中心であり続ける。

   「緩」

2019年に関しては、米国のシェール開発が続くなど、世界的に原油、そしてエネルギー全体的に需給の緩んだ状態が想定される。また、そうした環境下で、OPECOPECプラスの結束も、緩みがちになる可能性がある。

 

第一商品フューチャーズ24 村上孝一 課長

取材日:1219

   年間の予想レンジ WTI:4085ドル ブレント:4595ドル

   【注目点】貿易摩擦による世界経済の減速懸念、産油国の協調体制、イラン情勢

【サプライズ要因】米国発の世界的な貿易摩擦が解消、OPECが分裂の危機に、米国・イランが蜜月関係に。

   回答なし

   トランプ米政権が環境対策で世界と協調しない限り、世界のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合が高まることはないだろう。

   「協」

その理由、現在の世界情勢は政治、経済面で自国優先主義が台頭。協調体制が取れれば、懸念されている世界経済の減速は回避され、石油需要も減少傾向に陥ることはないため。また、世界が協調体制に向かうにはトランプ米政権の動向にかかっている。

 

楽天証券経済研究所 吉田哲 コモディティアナリスト

取材日:1220

   年間の予想レンジ WTI:4565ドル ブレント:5474ドル(いずれもレンジの上限は過去12カ月平均)

   【最も注目すべきポイント】トランプ大統領。OPECの政策決定を強くけん制できる他、民意を味方に原油価格の動向に関与を強めている。

【予想レンジからの逸脱】上限超え:米国の原油生産量の急減(夏場のハリケーンシーズンにメキシコ湾の他、メキシコ湾周辺のシェール主要地区で生産量が急減)下限割れ:第2次逆オイルショック(サウジ主導でOPECが、再び米シェールの退場を目的に価格下支えを放棄)シェールオイルの増産動向

   回答なし

   回答なし

   「政」

【消費面の“政”】米中貿易戦争の行方はまさに両国間の政策の行方次第であり、2019年の世界全体の各種エネルギー消費動向の鍵を握る。また、COP24で合意がみられたとおり、世界規模で政策的に化石燃料の使用の削減が進むムードが高まっている点も注目である。

【生産面の“政”】米国ではインフラ等、石油やガス生産において政策的に整備が進む動きが継続している模様。トランプ大統領のサウジなどへの政治的な介入もささやかれる。また、原油から天然ガスにシフトするという政策的な背景によりOPECを脱退したカタールの天然ガス生産動向に注目が集まる。

 

2019年のエネルギー業界では、2018年以上に、消費・生産の両面で、政策・政治の関与が強まることが考えられる。

 

 

◆本特集記事は、「市況羅針盤」担当記者(西江、大田、山岡、横井、田鎖、寺内)が昨年末、各アナリスト、エコノミストに電話およびメール取材してまとめた。

 

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