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第47回 ~エネルギーで探る宇宙の謎、タイタンで発見されたプラスチック成分の巻(2013年11月8日)

は~やっぱり松本零士の『銀河鉄道999』はいつ読んでも面白いなぁ。

あら、懐かしいもの読んでいるわね。

うん。今、ちょうどメーテルと鉄郎がタイタンに到着したところなんだ。

タイタンといえば、米航空宇宙局(NASA)の土星探査機カッシーニがタイタンでプロピレンを発見したそうよ。今年9月30日に、NASAが発表していたわ。

えっプロピレンを!?すごいじゃないか!!地球以外で発見されたのは初めてなんじゃないかな?

そうらしいわね。NASAの発表でも、プラスチックの原料が地球以外の衛星や惑星で発見されたのは初めてだってあったわ。このプラスチック原料ってプロピレンのことよね?

そうだよ。第16回でも触れたけど、原油を精製してできるナフサからエチレンやプロピレンといった石油化学製品がつくられて、それをさらに加工するとプラスチックや合成繊維といったものになるんだったよね。
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このうちプロピレンは、重合すると食品保存用の容器や車のバンパーなどに使われるポリプロピレンになるんだ。

へ~、それがタイタンにもあるのね。

・・・ところで、タイタンってよく知らないんだけど、どういう星なんだい?『銀河鉄道999』では、最初は人間が住めるような環境じゃなかったものの、その後入植者の努力で緑豊かな惑星になったとされているんだよね。

タイタンは土星最大の衛星よ。惑星の水星よりも大きくて、名前はギリシャ神話の巨神族ティタン(英語読みでタイタン)に因んでつけられているの。実際のタイタンは濃い大気と雲に覆われているし、太陽からとても遠いところにあるのでその大気温はマイナス180度にもなるらしいわ。とても人間が住めるような場所ではないわね。

そうなんだ~。なんだか残念だなあ。

でも、実はタイタンって「もうひとつの地球」と呼ばれているくらい、地形や気象が地球に似ているのよ。湖や火山があるし、雨だって降るそうよ。

えっ雨?だってさっき、タイタンの大気温はマイナス180度といっていたよね?そんな寒いところで雨なんて降るのかい?

実は、タイタンに降る雨は水じゃなくて、メタンなの。

メタンって天然ガスの主成分だよね?それもタイタンにあるのかい?

そうよ。タイタンを覆う大気の主成分は窒素とメタンなの。このメタンが、地球での降雨、蒸発のように繰り返され、気体、液体、固体と変化しているのよ。

そうなんだ。化学の話になるけど、メタンは炭化水素だよね?それにプロピレンも炭化水素の一つだ。タイタンには他にも炭化水素があるのかい?

えっ、炭化水素ってなに?

炭素原子と水素原子のみでできた化合物の総称さ。石油や天然ガスの主成分はこの炭化水素やその混合物なんだよ。メタンは炭化水素のなかで最も構造が単純で、1個の炭素原子と4個の水素原子で構成されているよ。プロピレンは炭素原子が3個と水素原子が6個。3個の炭素原子をもつものは、この他にプロパンとプロピンがあって、3つ合わせて「3カーボン(炭素)ファミリー」なんて呼ばれ方もあるんだ。炭素原子1個のメタンは「1カーボンファミリー」になるかな。

あっ!思い出したわ。3カーボンファミリーのうちプロパンやプロピンは以前からタイタンで確認されていたらしいわ。それで、これまでプロピレンだけが検出されていなかったんだけど、今回、カッシーニが搭載する複合赤外線分析器(CIRS)でようやく発見できたって、NASAの発表には載っていたわ。

なるほど、タイタンには他にも色んな炭化水素や化合物があるかもしれないね。

そうね。タイタンの大気組成は生命が誕生した頃の地球に似ているそうだから、もっと深く調べるとタイタンだけじゃなく、地球や生命誕生の謎なんかもわかるかもしれないわね。

う~ん。これまでエネルギーは自分たちの生活を豊かにするための資源という側面でしか捉えていなかったけど、こうして宇宙まで視野を広げれば、宇宙や生命の謎を解明する鍵になるかもしれないんだ。なんだかロマンを感じるな~。

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(文:石油化学チーム 川田)