ホーム  > やさしいエネルギー講座

第4回 ~船の燃料規制?!の巻~(2012年12月28日)

この前、オートガスで走る車は普通の車よりも環境に優しいって話をしたでしょ。その後、いろいろ調べていたら、国際的に環境問題に取り組む「フレンズ・オブ・ジ・アース」っていう非政府組織(NGO)が最近、クルーズ船の環境対策に関する調査を発表したっていうニュースを見つけたよ。

世界の大手クルーズ客船会社15社の「汚水対策」、「大気汚染物質削減」、「水質に対するコンプライアンス」の規制に対する取り組みを評価したものだね。

2010年の調査から評価を落とした会社はなかったけど、特に「大気汚染物質削減」については、10社が最低のF評価を受けているわね。船の燃料も大きな問題になってるの?

そう…フェリーやタンカー、貨物船とか大型船舶は、重油を燃料に走っていることが多いんだ。でも、重油を炊くことで、硫黄や窒素が排出されて、大気汚染の原因になってしまうんだよ。

車と一緒なんだね…今、世界中でいろんな環境保護運動が起こっているけど、船に関しても何かそういう動きあるの?

船舶燃料による海洋汚染対策については、1954年にすでに国際条約が採択されているよ。その後、タンカーが大型化したり、有害物質を含む物の海上輸送が増えたりして、海洋環境汚染への関心は高まっていったんだ。

海の環境汚染対策といえば、国連の国際海事機関(IMO)があるよね。

IMOが中心となって海洋汚染防止のための国際規制が作られているんだ。船舶に関するものとして第一歩となったのが、1973年に採択された「船舶による汚染の防止のための国際条約」だよ。その後、話し合いは続けられて、1978年に、1973年条約を実施するための枠組みである「マルポール条約」が採択されたんだ。

ずいぶん以前から話し合いが進められているんだね。

このマルポール条約を基に、船舶運航中に発生する汚水や船が運搬する有害液体物質に対する規制など、段階的にいろいろな対策が取られてきたよ。

船舶燃料についての基準もこういう規制のなかの一つなんだね。最近は、燃料から出る硫黄分の排出規制についての話をよく聞くよ。今年から北米で船舶燃料に含まれる硫黄分の規制が厳しくなったんでしょ。

そうだね。排ガス規制は、1国または、複数の国で取り決められた「排出規制海域(ECA)」とECA以外の全ての海域を指す「一般海域」に分けて、それぞれで段階的に行われているよ。

えっと…。IMOの取り決めでは今は、一般海域を航行する船は硫黄分が3.5%未満の燃料油を積まないといけないんだよね。

その通り。これまでは、一般海域では硫黄分4.5%とされてたんだけど、2012年から3.5%に強化されたんだよ。ヨーロッパや北米のECAではより厳しい規制が敷かれていて、2005年に4.5%から1.5%になってる。さらに、ヨーロッパでは2010年から、北米では2012年から1.0%まで規制強化されてるよ。

なるほどね。これから先はどうなるの?

ヨーロッパや北米のECAでは、2015年に硫黄分を今の1.0%から0.1%に引き下げるんだ。一般海域の規制も2020年に3.5%から0.5%まで下げることが検討されているよ。でも、一気に変更するのは難しいから、IMOは2018年に会議を開いて、一般海域での規制についてもう一度話合うことにしてるんだ。

そうなんだ。だけど、硫黄分を下げると一口に言っても、実際にはどうしたらいいのかな?

今年から北米での硫黄分規制が強化されて、アジアでも船舶燃料向けに硫黄分1.0%以下の低硫黄重油を販売する売り手が出てきてるね。こうやって、燃料自体を変更するっていうのが一つの方法だよ。ただ、規制が0.5%以下になった場合、重油の硫黄分をそこまで下げるのは技術的に難しいって言われているんだ。だから、軽油の使用も検討されてるよ。

ふ~ん。でも、品質の良い重油や軽油はコストが高いんじゃない?

そう。だから、一部では、排ガス浄化装置の開発なんかも進められているみたいだよ。あとは、船舶燃料を重油から軽油とか液化天然ガス(LNG)に転換する動きもあるよ。

前回やったね。LNGは石油に比べて二酸化炭素の排出量も少ないからクリーンだって。

ノルウェーなどの北欧ではもう、LNGを燃料として走るフェリーが数隻運航しているよ。

そういう船がもっとできればいいのかな?

うん。でも、LNG燃料に対応した船はまだ少ないし、港の燃料補給設備がLNG補給に対応していないなど、問題は多いんだ。ヨーロッパでは、オランダのロッテルダム港やスウェーデンのヨーテボリ港がLNG燃料の供給促進をしていこうという約束をしたり、ベルギーのLNGターミナルを運営するフラクシスが2015年からのLNG船舶燃料供給のために港施設を使用したい船を募集したら、たくさんの応募があったり、船舶燃料のLNG転換はとっても注目されているんだ。

少しずつ設備が整って、綺麗な海が守れるといいね。

このコーナーに対するご意見、ご質問は、リムゾー&リミーまで
電話 03-3552-2411
メール rimzo@rim-intelligence.co.jp
(文:石油製品チーム鎌田)
クイズに挑戦してみよう!
今回の
「やさしいエネルギー講座」
から出題!

船舶事故や海洋汚染を防ぐことを目的に制定された条約は?

正解と思ったボタンを押してみよう。

エネルギーの知識をさらに深めたい人は、一般社団法人日本エネルギープランナー協会の検定に挑戦してみよう!

https://www.energy-planner.jp

(リム情報開発は、一般社団法人日本エネルギープランナー協会を応援しています)