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第10回 ~産油国なのにガソリン輸入?の巻~(2013年2月15日)

ねえ、お兄ちゃん、イランって原油の輸出国よね?

そうだよ。イランは石油輸出国機構(OPEC)のメンバーだよ。日本もイランから、毎年たくさんの原油を輸入しているよ。2010年度の日本の原油輸入先を見ても第4位だよ。

そうよね。でも、この前、イランのアバダン製油所に新しくガソリンを精製する設備ができて、その完成式で石油相が、「イランは近い将来、ガソリンの輸入国から輸出国になれるかもしれない」という発言をしたっていうニュースを見たの。現在、イランはガソリンを輸入しているの?

そうなんだよ。米エネルギー情報局(EIA)は、2011年11月のイランについてのレポートで、「イランはガソリンやその他の石油製品の国内自給率が十分でないため、精製設備能力の拡張や新規設立で自給率を伸ばそうとしている」と書いているよ。このレポートによると、イランの2010年のガソリン輸入量は1日に7万8,000バレルだって。

イランのほかにも、イラクやインドネシアも原油を輸出しているのに、ガソリンなどの石油製品を輸入しているわ。原油が採れるのに、どうしてなの?

製油所を設立したり、精製設備を拡張したりするには、高度な技術が必要なうえに、お金もたくさんかかるんだ。だから、産油国であっても、ガソリンなどの石油製品の自給率が100%とは限らないんだ。

そうなのね。原油が採れるからって、その国で簡単に精製できる分けでもないのね…。それで、産油国じゃないのに、日本にもたくさんの製油所があるのね。

うん。日本は、戦後、原油を輸入して日本国内で精製して製品を供給する、「消費地精製主義」というのを基本としているよ。

日本国内で精製することの利点って何かしら?

まず、原油の方が、石油製品よりも安いから、原油を輸入したほうが輸入コストがかからないとか、例えば冬に需要が伸びる灯油を多く精製するとか、日本の需要構造に合わせて生産できるとかっていう利点があるんだよ。

日本には、関東だけでも千葉や鹿島、川崎や根岸に製油所があるよね。

うん。関東地域のガソリンなどはこういう製油所で精製されて、みんなに供給されてるんだね。

でも、産油国だって自分たちで使う石油製品を自給できるようになれば、よりメリットがあるでしょ?最初に例に出したイランみたいに、産油国が自国の精製能力を高めようという動きはほかにはないの?

あるよ。例えば、ベトナムなど東南アジアの新興国も新しく国内に製油所の建設を始めたりしているよ。さっきと同じEIAのレポートによると、インドネシアの2011年のガソリン精製自給率は国内需要の54%だけ。インドネシアはアジアでは最大のガソリン輸入国なんだ。だから、インドネシアは2019年までに、石油製品の自給率100%達成を目標に製油所の精製能力拡張などを行っているよ。でも、政府の報奨金の不足などで、ほとんどのプロジェクトが遅れていると言われているんだ。

そうか…。ガソリンや灯油が街に届くっていうのは、大変なことなのね。

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(文:海外製品チーム 鎌田)
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