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第11回 ~賢く暮らそう、スマートグリッド!の巻~(2013年2月22日)

最近、テレビや新聞で中国の北京などの都市部で起こっている大気汚染が話題になっているわね。

そうだね。中国は石炭資源に恵まれていて、大型の火力発電所の原料としているから、もともと大気汚染の問題はあったんだ。今、さらにこの大気汚染が深刻化しているのは、寒さで石炭ストーブを使う人が増えたことや、15日までの旧正月(春節)を祝うための爆竹が理由とされているんだ。それに、旧正月が明けた今後は、多くの人が都市部に戻ってきて、経済活動も活発になるから大気汚染はさらに悪化するかもしれないね。

有害物質を含んだ濃霧に覆われ、高速道路が閉鎖されたのよね。今後の日常生活や健康がとても心配ね。何か対策はないのかしら。

一つには、電力エネルギーの需要を抑えることだね。さっき話した大型の石炭火力発電所は、主に大都市などの電力消費地へ供給しているんだ。電力の需要を抑えたり、効率よく電力を消費して節電すれば石炭の使用を減らせるかもしれないよね。

なるほど。でも、電力を使わないようにするっていうのはわかるけど、効率よく消費するには一体どうすればいいの?

そこで、最近注目されているのが次世代送電網「スマートグリッド」さ。

その言葉、聞いたことあるわ。確か、米国のオバマ大統領が「グリーンニューディール」政策の一環に位置付けていたわ。

そうだよ。さすが、よく知っていたね。直訳すれば「賢い電力システム」という意味で、IT技術を駆使して電力の流れを供給側、需要側の両方から制御し、電力システムの最適化を図るんだ。

なんだか格好いいわね。具体的にはどんな仕組みなの?

例えば、今の電力網のシステムでは、家庭やオフィス、工場などが消費している電力量をリアルタイムに知ることはできないんだ。配電盤などには電力メーターが備えつけられてるけど、これは積算消費量や月間消費量を知ることはできても、それ以上のことはできない。そこで、既存の電力計の代わりに「スマートメーター」という機器を設置して、電力会社は供給先のオフィスや家庭などの詳細な電力消費量を把握して、そのデータに基づく電力消費予測を立てる。

把握できるようになれば、どんなことができるの?

より正確な電力消費量予測を立てて、それをベースに計画的に発電し、送電することができるようになるんだよ。こうした無駄の排除こそが、スマートグリッドの大きな目的の一つなんだ。それに、蓄電技術も導入すれば、電力を貯めておいて需給バランスに合わせて調整することもできるよ。

そうね。これなら安定的に電力を供給し続けられるわね。

それに、スマートグリッドの特徴は、単に電力供給を効率よく、安定的に行うだけじゃないんだ。再生可能エネルギーといったクリーンなエネルギー発電も取り入れ、従来のように大型発電所だけに頼らず、地域で必要な電力を消費地で生産できるという仕組みも備えているよ。

すごい!環境対策やエネルギーの自給率を伸ばすという点でも役立つのね。

日本では、経済産業省が中心となって太陽光発電の導入によるスマートグリッドを目指しているよ。ただ、太陽光は電力需要の少ない晴れた昼間に最大限発電され、余ってしまったり、天候によって発電量が左右されるといった不安定さが課題となっているんだ。だからこうした課題を解決するために、現在様々な実証実験が各地で行われているんだよ。

へえ~。じゃあスマートグリッドが実現するのはまだこれからなのね。中国でもスマートグリッドは検討されているのかしら?

もちろん、中国も含めて世界の様々な国で注目されているよ。ただ、それぞれの国が抱える電力事情は異なるから、スマートグリッドの考え方はそれぞれ違うんだ。中国やインドなど経済が急成長してエネルギーの需要も急速に伸びている国では、電力不足による停電が大きな問題だからね。IT技術によって効率的な送電システムを構築して、電力の安定供給を確保したいと考えているよ。逆に、日本ではすでに基幹となる送電網が整っていて、需要に見合った供給量を調整するITの活用も進んでいるから、スマートグリッドの考え方は太陽光などの自然エネルギーを導入した電力システムの再構築が主目的となっているんだ。

一口にスマートグリッドと言っても、国の抱える電力事情によって内容や目的は違うのね。でも、環境に配慮しながら電力を安定的に供給するスマートグリッドが世界に広まれば、私たちの生活や環境はもっと豊かになるわね。

そうだね。ただ、スマートグリッドにもいくつか問題点はあって、その一つがセキュリティ上の問題なんだ。スマートグリッドには高度な通信システムや技術が使われるから、それに対する不正操作やウイルス感染などの恐れがあるんだけど、まだまだ対策は不十分だと言われているんだ。

そうなの。実現するには解決しなくちゃいけない問題が山積みね。でも、将来こうした賢い暮らしができるようになるなんて、楽しみだわ。

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(文:石油化学チーム 川田)
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