第17回 ~逆オイルショックとは!?の巻~(2013年4月5日)
ただいま~・・・ハックション!
おかえり。お花見は楽しかった?あれ?風邪でもひいた?
お花見はとっても楽しかったわ。でも、花粉症のお薬飲むの忘れちゃって・・・ックシュン!
それは大変だ。ティッシュを・・・あっ切れてる。
なんですって!?今すぐ買いに行かなきゃ!女子たるもの鼻水は垂らせないわ!!
ハハハ・・・
何ニヤニヤしてるのよ。
いや~そうやってティッシュを買いに走る姿をみていると、オイルショックの頃を思い出してさ。
オイルショックって、中東の紛争や政情不安で原油が足りなくなるって大騒ぎした出来事のことよね?確か、原油が輸入できなくなればガソリンもティッシュペーパーもなくなるかもしれないという噂が広まって、日本中の人が買いだめに走ったのよね。その結果、石油への需要が急速に拡大して値段がどんどん上がっちゃって、1年足らずで約4倍にまで跳ね上がったんでしょ?あれ、でも確かオイルショックって第一次が1973年で、第二次でも1978年末の話のはず。お兄ちゃんって一体今いくつ・・・
いやいや!リミー。オイルショックをそんなに詳しく知っているなんてさすがだね。若いのに感心だ。まあ、僕もそんなに歳は変わらないんだけれどもね。ハハハ。
・・・・・・
でも、リミーは「逆オイルショック」って知っているかい?
えっ?オイルショックの逆ってことは・・・原油が余りすぎちゃって、値段がすごく安くなっちゃったってこと?
その通り。実は、二度のオイルショック後の1980年代半ばから後半にかけて、価格の暴落が起こっていたんだ。それが「逆オイルショック」って呼ばれているんだ。
そうだったの!でも、なぜ?それに、原油が安くなるって、消費国の日本にとってはいい話に聞こえるけれど、世界にはどんな影響があったの?
それを知るには、オイルショック前と後で石油産業の構図がどう変わっていったのかについて理解しないとね。この前、人類と石油とのかかわりについて学んだばかりだから、今度は歴史のなかで大きな転換点となったオイルショック前後の時期について学ぶのもいいね。まず、二度目のオイルショックが起きた1979年までは、世界の石油産業の主導権は中東の産油国で構成する石油輸出国機構(OPEC)が握っていたんだ。
だから中東地域で戦争が起きたり、産油国が原油の供給を止めると発表すれば、供給不安が一気に世界中に広がって、原油や石油製品の値段もどんどん上がってしまったのね。特に、当時の日本は輸入の約80%を中東品が占めていたから、その影響は大きいわよね。
そのとおり。だからオイルショック以降、原油の輸入国は調達先を中東以外に分散させようと、世界各地で油田開発を進めていったんだ。その結果、供給量は大幅に拡大していった。それに、主な消費国だった先進国は、石油に代わるエネルギー源の開発、産業構造の転換など、省エネルギーあるいは脱石油政策も推し進めたから、石油需要も鈍化していったんだ。
なるほど。そうやって需要と供給のバランスが崩れたから、原油価格は急速に下落したのね。
簡単に言うとそうだね。原油価格は、ここ最近、1バレル当たり90ドル台半ばあたりで推移しているけど、逆オイルショック時は20ドルを下回っていたんだ。
20ドル以下!?そんなに安かったのね。OPECは何か対策をとらなかったの?
OPEC諸国は生産量を減らして価格を維持させようとしたんだけど、すでにOPEC以外の国々も油田開発に次々と新規参入していたから、OPECの市場シェアが低下するという結果を招いてしまったんだ。当時、OPECの中でサウジアラビアは需給バランスを調整する、スイングプロデューサーという役割を担っていて、減産を一手に引き受けていたんだけど、こうした状況にしびれをきらして増産に転じたから、原油の値段は一段と下落したんだ。それでまた減産や増産を繰り返したけど、価格は低いままだったんだよ。
じゃあ、いつ原油の値段は上がったの?
原油が今のような水準まで上がったのは、2000年以降だよ。背景としては、原油価格の急落で石油会社の収益が悪化していたため油田開発が一時停滞したり、中国やインドなどの新興国からの需要が増大したことが挙げられるよ。それに原油の先物市場でヘッジファンドが大量に売買を繰り返したことも影響しているよ。
ふ~ん。産油国や石油会社にとっては大変かもしれないけど、消費者の私達としては安いままがよかったわね。
それが、そうでもないんだ。確かに原油を安く買えるというメリットはあるけれど、デメリットも多いんだよ。さっきも言ったように、原油の値段が下がって産油国や石油会社の財政が悪化すれば、進行中のものはもちろん、今後の新規油田開発も停滞してしまうから、プラント建設に関わる企業などにも影響は及ぶだろう。それに、産油国が原油の輸出で得たオイルマネーは世界経済でも重要な位置を占めていたんだけど、このオイルマネーが減少したことで株式相場の下落や国際信用不安も広まったんだ。
原油価格が安すぎれば、経済全体にとってはマイナスになってしまうのね。勉強になったわ。
まあ、何事もほどほどがいいってことだよ。
そうね。あっ、そういえばもう一つ聞きたいことが。お兄ちゃんの年齢って・・・
そういえば、ティッシュを買いに行くところじゃなかった?鼻から水が見えかけているけど。
きゃあ~!!急がなきゃ!
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「やさしいエネルギー講座」
から出題!
石油輸出国機構(OPEC)の中で、サウジアラビアが果たしてきた需給調整を担う役割は何と呼ばれていた?
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