第18回 ~いろいろ大変!?LNG船 揚荷役現場の巻!~(2013年4月12日)
”Methane Becki Anne"が18日に千葉の富津ターミナルへ入港ね。DFDEエンジン搭載船なんてロマンがあるわぁ……アクアラインまで見に行こうかしら。それにしても東日本大震災後は、火力発電用のLNG輸入が本当に増えたわね。前は赤道ギニア出しのカーゴなんて殆ど聞かなかったけどなぁ。
ただいまー。
あっ、お兄ちゃん。お帰りなさーい。昨日はどこ行ってたの?
えへへ!荷役現場を見学してきたんだよ!LNGを受入基地に移す作業を間近に見たんだ。
えっ、本当?すごいね! これからはシェールガス革命で、米国から日本への輸出もありそうだもんね。今のうちに見られたのは良かったんじゃない?
うん!でっかいLNG船は迫力あったなぁ。
船が岸壁について、荷揚げして、離れるまで……つまり、着桟から離桟までずっと見学できたの?
うん。だから昨日帰ってこれなかったんだ。
300mを超えるような大型のタンカーだと、荷揚げするのに丸一日かかるっていうもんね。 疲れたでしょ?お茶でも飲みながら聞かせてよ、荷役の話。
ありがとう。まぁ、なんていうかなぁ……大変だね、荷役って。まず着桟作業からして危険がいっぱいだよ。船を岸壁に固定するために、係留索っていうワイヤーをフックにかけるんだけどさ。係留索って2、3人がかりでもすごく重そうなんだ。間違って海にでも落ちたらって考えると、見てるだけでも寒気がしたよ。もちろん作業してる人はベテランだから、淡々とこなしてたけどね。
へ~。そりゃそうよね。あれだけ大きな船を固定するなら丈夫なロープを使わなきゃいけないんだろうね。
うん。それで船にある係留索16本を繋いだら、着桟作業は完了。そうしたらギャングウェイっていうはしごを陸側から船側にかけるんだ。これを掛けないと、作業員が陸側の基地とLNG船を行き来できないからね。
船員は何となく分かるけど、陸側の作業員って何をする人たちなの?
ギャングウェイはボタン操作で動くんだけど、そのボタンを押したり、アームの接続作業をしたりする人たちさ。
アーム?
アームっていうのはLNGを船から陸に荷揚げするための配管のことだよ。アームはマイナス162度というLNGの超低温にも耐えられるように作られた特殊な配管で、荷役の要ともいえる設備なんだ。
なんだか話を聞いているだけでも凄そうね。
船の種類によっては配管同士の距離が近かったり、遠かったりするんだ。アームはそうした船の違いにも対応しなくちゃならない。そのためにスイベルっていう部分を回転させて、どの船の配管にも適合するようにラジコンで調整するんだ。
ラジコンで操作するんだぁ。私も見てみたいなぁ。
それでアームの接続作業が終わったら、ESDテストっていうのをやるんだ。
また難しそうな単語が出てきたわね。
ESDっていうのはEmergency Shut Downの略で、日本語にすると緊急遮断という意味になるんだって。LNGを荷揚げしている最中に何かしらのトラブルが起きて、作業をすぐに中断しなくちゃいけない場合、迅速かつ安全に荷役を止める方法がこのESDなんだ。ボタン一つだけで、船のポンプや陸の受入バルブが自動で止まったり閉まったりするシステムなんだよ。
へー、ハイテクだね~。
うん、全自動化っていうほどじゃないけど、機械とかコンピューターに頼ってる部分は大きい印象を受けたよ。でもベテランの船員さんは、「最後は経験と勘が大事」だって言ってたっけな。
機械が故障したら、人間が対処するほかないもんね。そのESDシステムをチェックしたらいよいよ荷役開始ね?
うーん、それがそうとはいかないんだ。LNGって超低温だろ?だからゆっくりLNGを配管に流して、荷役で使う配管を徐々に徐々に冷やしていくんだ。この作業はクールダウンといって、1時間ほどかかるよ。
あ~なるほど。そうしないと急激な温度差で配管や設備にダメージを与えちゃうからでしょ?そういえばLNGの配管には「霜が付く」って話を聞いたことがあるわ。
一番大変そうだったのは、タンク内のLNGを全て揚げ切った後に行うパージ作業かな。配管内に残ったLNGを窒素で蓄圧して追い出すんだけど、これをやるのが朝5時!海沿いだから風が冷たくて、寒かったよ~。
わぁ、聞いただけでも寒そう!真冬は本当に凍えそうね。
日本ならまだしも、サハリンやアラスカでの荷役だったら、それこそ氷点下何度っていう世界だろうね。
夏は暑いでしょうし、こうして私たちが電気やガスを使えるのも、日々安全荷役に努めている船員さんや作業員の人たちのおかげよね。
そうだね。LNGの揚荷役についてはまだまだ教えたいことがあるんだけど、今日はさすがに眠たくなってきたからまた今度にしようか。
うん。無理しないでゆっくり休んでね。
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「やさしいエネルギー講座」
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