第22回 ~発電燃料重油と価格、世の中いつでも想定外の巻~(2013年5月17日)


そうね。これを見て。2011年3月の東日本大震災前後の一般電力会社10社の月間重油受入量と消費実績よ。火力発電燃料としては、前にもやったように液化天然ガス(LNG)、原油、石炭も使われるけど、今回は重油に重点を置いてみてみよう。
大震災以降、受入量も消費量も増えているのが良くわかるね。燃料使用量は、冷房や暖房で電気をたくさん使う夏と冬に特に増えるよね。
でも、この表を見ると、震災後は夏場や冬場の需要期以外でも、震災前の需要期くらいの量の重油を使っているわね。震災後の需要期はさらにたくさんの量を使っているわ。ねえ、需要が増えるということは、値段も上がるでしょ…。前に、消費量が増えたことでLNGのスポット価格が上がったという話をしたわね。重油の値段も上がったの?
じゃあ、こっちの表を見てごらん。発電燃料に良く使われる硫黄分が0.3%の日本着カーゴのスポット市場での販売プレミアムだよ。プレミアムというのは、カーゴ取引の際の割増金のことだよ。やっぱり震災直後から急激に上昇しているね。2011年8月のプレミアム月間平均値はトンあたり143.81ドルで、2010年の2.5倍になっているね。2011年以降は端境期でもプレミアムの平均値はずっと130ドル以上に維持されているよ。
あれ?でも、2012年のプレミアムの動きは何だか変ね。重油の受入量や消費量は、2011年より2012年のほうが多いでしょ。だから、全体的に価格も2012年のほうが高いというのは分かるんだけど…。2011年のプレミアムは、春から夏にかけて、重油受入量や消費量が上がるにつれて、プレミアムも一緒に上昇しているわ。でも、2012年は、夏にかけて、受入と消費量は増加しているのに、プレミアムは下がっているわね。
良く気付いたね。こうして2つの表を重ねるともっと良く分かるでしょ。実は、2012年の夏は当初予想されていたほど、スポット取引が盛り上がらなかったんだ。
スポット取引というのは、当面必要なぶんをその場で売買する取引のことね。
そう。去年の夏は原子力発電所が運転停止しているのは事前に分かっていたから、電力供給のひっ迫を心配した需要家たちは、あらかじめターム契約や国内生産量を増やすことで重油を確保していたんだ。だから、スポット市場で重油を買い足す必要性が少なかったんだ。
それで、期待されていたほどスポットの買い付けか活発でなかったのね。そういえば、去年の夏は需要期なのに、低硫黄重油が余剰なんて話も聞いた気がするわ。
その通り。日本での発電用燃料需要が増加すると期待して、日本向けに販売可能な品質の低硫黄重油を扱うトレーダーが増えたんだ。結果として、供給過多になり思っていたほど価格が上がらなかったというわけ。在庫を多く抱えてしまった売り手は値段を下げて売りに動いていたよ。
ふ~ん。商売って難しいのね…。今年の夏はどうなるのかしら?
今の時点では、まだ夏には早いので買い付けは活発ではないね。売り手も今売ってしまうよりは、何とか夏に少しでも需要が増えて価格が高くなってから売ろうとしているみたいだよ。
なるほどね。どちらにしても、私は暑すぎる夏は嫌だわ。アイスを食べ過ぎないように気をつけよっと。
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