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第32回 パイプラインもLNGも。欧州のガス事情の巻(2013年7月26日)

ロシアからヨーロッパ向けの、ガス販売量が増えたみたいね。

そうだね。今年の1月~6月の間に、国営のガスプロムがトルコを含めたヨーロッパに供給した数量が、前年同期の水準を10%上回ったんだ。ロシアとヨーロッパは、パイプラインでつながっているんだよ。

ヨーロッパでガスの需要が増えたの?

必ずしもそうじゃないんだ。船で運ばれくる液化天然ガス(LNG)や、ロシア以外の国からのパイプラインで運ばれるガスの供給が減ったからなんだ。その代わりとして、ロシア出しガスの受け入れが増えたんだよ。

どこの国が減らしたの?

ヨーロッパ南部のイタリアとスペインは、アフリカ北部のアルジェリアとパイプラインでつながっているんだ。そのアルジェリアなんかは今年の春、イタリアのENIという会社と合意して、イタリア向けのパイプラインによるガスの供給を減らしたんだ。

そんなことできるの?

アルジェリアはイタリアに違約金を払ったって言われているけど、それでもアジアや南米にLNGとして売ったほうが、利潤が大きいと見込んでいるようだよ。

ところでヨーロッパにもLNGって来てるのよね。

そうだよ。世界で初めてLNGを輸出したのはアルジェリアで、イギリス向けだったんだ。ただ、ヨーロッパ向けのLNGは、ほとんどが数年から数十年のターム契約で販売されてて、必要な時に1カーゴだけ買うといった、スポット契約はほとんどないんだ。だから、ヨーロッパにLNGがついても、市場ではあんまり話題にはならないよね。

ヨーロッパでは、パイプラインとLNGのガス、どっちが多いの?

地域にもよるけど、パイプラインの比率が圧倒的に高いんだ。8割以上の需要が、パイプラインで運ばれるガスで賄われているんだ。

へえ。ロシアとアルジェリア以外からも、パイプラインでガスが送られてくるの?

北はノルウェーからガスが来るし、東はイランとパイプラインでつながっているんだ。

ヨーロッパの周りには、ガスが出るところがたくさんあるのね。

そうだね。ヨーロッパの大陸内はもちろん、イギリスとヨーロッパ大陸のあいだにもパイプラインが通ってるんだ。だから、どこかのガスの供給が減少しても、今回みたいに他からのガスの受け入れを増やして、賄うことができるんだ。

日本とはかなり違うのね。

そうだね。例えば、イギリスとベルギーやオランダを結んでいるパイプラインは、そのときの各地の天然ガス相場や、需要によって、イギリスから大陸、大陸からイギリスのどちらの方向にもガスを流すことができるんだ。

日本もパイプラインのガスとLNGの安い方を選べると、ガスの輸入価格も下がるのにね。

そうだね。日本の近くで、天然ガスが出るのはロシアくらいしかないから、仮にパイプラインがあっても、ヨーロッパみたいに色々な国のガスを選ぶことは難しいんだ。それでもガスの輸入価格が下がるように、対策を取る必要はあるね。

年末から円安も進んで、輸入価格も上昇してるしね。

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(文:LNGチーム 深水)
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