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第39回 中国、環境対策に乗り出す~の巻(2013年9月13日)

「中国の製油所、環境対策のため性能向上へ」。ちょっと前にインターネットでこんな記事を見つけたんだけど、いったいどういうことなんだ?

お兄ちゃん、中国では大都市を中心に大気汚染が広がっているのは知っているでしょ。事態を重く見た中国政府は今年2月、2017年までに国内で使用する軽油に含まれる硫黄分を10ppm(0.001%)以下に抑えるとした新しい基準を発表したのよ。10ppm品はほとんど硫黄分を含まないから、サルファーフリーとも呼ばれているの。

10ppmっていうけれど、実際、中国ではいまどのくらいの品質のものが使われているんだ?

都市部と農村部などでも違うんだけれど、一般に自動車やトラックに使われているのは350ppmの軽油らしいわ。でも、地域によっては2,000ppm品が使われていたりして、まだまだ環境問題への対策が遅れているといえそうね。政府は新しい方針を示したけれど、あんなに広い中国で一気に広めるのは難しいことね。

これからどういう手順で進めるんだい?

政府の通達によって、中国石油天然気(CNPC)、中国石油化工(SINOPEC)、中国海洋石油(CNOOC)という3大国営石油会社は今後、それぞれの製油所で生産する軽油の硫黄分を低くするように性能アップしないといけないのよ。現地のニュースによると、例えばSINOPECは、年内に保有する12製油所で脱硫装置の性能アップを図ると伝えられているわ。脱硫装置っていうのは、製品から硫黄分を取り除く機械のことね。

でも、品質の高い製品を作るのにはお金がかかるんじゃない?

石油各社は対策のために3,000~4,000億円の投資が必要との話しもあるようね。環境対策によって収入が増えるわけじゃないから、石油会社にとっては頭の痛い問題ね。軽油は、トラック輸送、農作業、漁業などさまざまな用途に使われていて、簡単に利用者にコストを転嫁できるわけでもなさそうだし。

国際社会での存在感が増してきて、中国も環境に対する意識が随分と変わってきているんだね。「世界の工場」と言っても、周囲への影響を無視するわけにいかないんだね。ところで、日本の対策はだいぶ進んでいるんでしょ?

日本ではもうだいぶ前から10ppm軽油を使用しているわ。石油連盟の資料によると、日本では既に2005年1月から供給が全国で始まっているわ。中国に比べると随分と早いってわけね。

日本の先進的な取り組みが他の国にも役立つといいね。

そうね。一方で、環境問題とは別に、日本や韓国、台湾、それに中国・・・多くの国や地域で10ppm軽油が作られるようになると、今度は海外での販売競争が激しくなるっていう見方もあるわ。

え?どういうこと?

どの国でも、在庫がすごく増えたり、国内外の価格に大きな差が出た場合、軽油などの石油製品を輸出するのよ。これまで中国は硫黄分の高い500ppmや2,000ppmといった軽油を輸出してきたけれど、今後は10ppm軽油を輸出するようになるかもしれないでしょ。そうすると、北東アジアの日本、韓国、台湾、中国、こうした国や地域は輸出という面ではみんなライバルになるのね。品質の高い軽油は、欧州や豪州向けに高い値段で取引されることが多いわ。

へ~、そうなんだ。環境問題、輸出競争・・・13億人の人口を抱える中国の動向は、周辺の国々に大きな影響を及ぼすんだね。これからも中国から目が離せないな。
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