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第42回 共同事業でコスト削減! ~コンビナートは協力で強力に~の巻(2013年10月4日)


もちろんよ。コスモ石油と極東石油工業(KPI)がそれぞれの製油所を共同で操業することを検討するって話よね。

たしかに『共同事業』って書いてあるけど、具体的には何を協力するの?


ほんとだ。市原市にあるっていうか、隣接してるんだね。

この両製油所間の距離は、直線で約2.5km。ここにパイプラインを敷いて、燃料や製品を融通できるようにするのが狙いよ。

じゃあKPIが海外から輸入して荷揚げした原油を、パイプラインでコスモ石油のタンクに運ぶことも可能になるんだね。でもそうすることでどんなメリットがあるの?

それはやっぱりコストの削減よ。つまりお金を無駄に使わずに済むってことね。製油所では、原油を精製して灯油やガソリンをつくるでしょ。でも常圧蒸留装置を1基動かすだけでも電気代や人件費がかかるし、原油から適切な比率で各石油製品を精製して常に最大限の利益を得るのは難しいわ。これが共同で一つの大きな基地を使えるようになれば、二つの製油所で重複している設備を廃棄して運転・管理コストを削ることができるし、利幅の大きい生産計画も立てやすくなるんじゃないかしら。

なるほどね。そういえばここ20年で製油所の数がだいぶ減ったっていう話を聞いたことがあるぞ。それもコスト削減が理由だったのかな?

そうよ。1996年に特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)が廃止になって、石油関連整備法が施行されてから、石油製品の供給は効率化の一途をたどってきたわ。製油所を統廃合したり、精製設備の高度化を推進したり。その結果、お兄ちゃんの言うとおり製油所の数は一番多かったときの37から、今では27にまで減ったの。

そうだったんだね。じゃあ今回のコスモとKPIの件も、別に珍しいことじゃないんだね。

そうね。特にこの両製油所がある五井海岸沿いでは、周辺のコンビナート各社が以前から共同で技術開発等に取り組んできたわ。例えばコンビナート一帯へ安定的に水素を供給するシステムがその一例よ。出光興産と三井化学で水素が副生されたら、それを一か所に集めて太陽日酸に供給する。そういうことを可能にしたシステムなの。

たしかにちょっとした余りものでも、少しずつかき集めれば無駄に捨てたりせず、有効に再活用できるもんね。僕の友達にもコーヒーの飲みカスを集めて、消臭剤に利用している人がいたなぁ……。まあとにかく、共同事業でコストが削減できるってことは分かったよ!

うん。じゃあ、なんでコストを削減する必要があるのかしら。今度はそれを考えるべきね。

えっ。そりゃあ何だって安い方がいいからに決まってるだろ。

そうかしら。コストを売上に転嫁できているうちは、原価の高さなんてそんなに気にならないんじゃないの?

え…っと。あっ、ていうことはコストを下げざるをえない、外的な要因があるってことかな?

そう。今、国内の製油所で作られた石油製品は、海外からの安い輸入品と比べて価格競争力を失っているの。コストを抑えて販売価格を引き下げないと、そういう輸入品に勝てないのよ。

へ~、そういう背景があるんだね。

コスモとKPIの共同事業を進めるにあたっては、合弁会社の設立も画策されているわ。石油化学コンビナートの競争強化を推進する経済産業省の後ろ盾もあるっていうし、今後の展開は要チェックね。
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