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第44回 どうする、原発汚染水の巻(2013年10月18日)

東京電力の福島第一原発で、汚染水漏れがあったわね。これで作業員が被曝したのよね。

そうだね。福島第一原発では今月、タンクから汚染水が漏れだす事故も起きているよね。

でもそもそもなんで、福島第一原発では、汚染水が溜まっていっているの?

2011年の東日本大震災のときに、福島第一原発で事故が発生して、原子炉の温度が下がらなくなってしまったんだ。原子炉の温度計は400度まで測れるんだけど、これを超えてしまっていたんだ。それで原子炉を冷やすために、水を循環させているんだよ。

循環してるんなら、汚染水は溜まらないんじゃない?

そうだといいんだけど、原子炉が壊れているから、漏れ出てしまう分があるんだ。これを2年半のあいだ、タンクに溜め続けているんだよ。

じゃあ、水で冷やす作業を続けている限り、これからも汚染水は溜まり続けるのね。

さらに悪いことに、この原発がある地域では、地下水が豊富に湧き出てくるんだ。だから、原子炉から漏れ出した冷却用の汚染水に、地下から湧き出る地下水が混ざって、汚染水の量は増える一方なんだよ。

事故のせいで、地下水が湧き出てきたの?

そうではないんだ。原発を建設する時点で、地下水がたくさん出てくるということはわかっていたから、福島第一原発、第二原発の周囲だけで、20本の井戸を作って、地下水を汲み上げていたんだよ。

その水も、溜めていたの?

事故が起きなれば、単なる地下水だから、そのまま海に流されていたんだ。そういった意味では、原発を建設したときにはこのような事故が想定されていなかったんだよね。

でもこの汚染水、どうすればいいの?

東電も決して、手をこまぬいているわけではないんだ。まずは、湧き出る地下水の量を少しでも減らすための凍土方式。土を凍らせて氷の壁を作って、地下水が原子炉にたどり着くのを防ぐんだ。大手ゼネコンの鹿島が提案した方式だよ。

これがうまく行けば、大量に地下水が流れこむことはなくなるのね。でもすでに溜まってしまった汚染水はどうするのかしら。

これについては、ALPS(アルプス)という装置を使って浄化して、海に放出することを検討しているんだ。放射性物質を吸着剤で吸い取って、取り除くんだ。

へえ、そんなことができるんだ。浄化した水なら、海に流して大丈夫なんだよね?

ただこのALPSにも問題はあって、今のところセシウムとトリチウムという物質は吸着できないんだ。さらに、原子炉の解体(廃炉)が終わるまでは、原子炉を冷却し続けなければならないから、廃炉までの何十年という間、原子炉から漏れ出す汚染水は溜まっていくんだ。

それなら、廃炉までずっとALPSを動かして、浄化を続けなければならないのね。

そうだね。それに凍土方式も完成は1~2年先の計画だから、しばらく今の状態が続いてしまうんだ。

原発って、解体するのにも時間がかかるのね。

そうだね。今はたまたま原発の事故が問題になっているけど、原発以外の発電所だって、いつ事故が起こるかわからないから、いろいろな可能性を想定しておくべきだね。

そうよね。日本全国、どこだって大地震が発生する可能性はあるものね。
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