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第71回 (2019年7月10日)

 お気に入りの一冊を取り出し、ページをめくる瞬間こそ、本好きには至福の時という。他方、若者を中心に活字離れが叫ばれて久しい。「本の虫」は絶滅危惧種になってしまうかもしれない。

 新聞の書評欄を参考にする人たちは多いだろう。各界で活躍する指導者たちの読書遍歴を紹介する、日経新聞の書評コーナー「リーダーの書棚」は読み応えがある。進路決定で影響を受けたり、ビジネスで針路を選択する際に役立った10冊ほどがリストアップされる。書斎を覗き見る感覚になり、彼らの精神に触れるような気がしてくる。

 読売新聞の企画「HONライン倶楽部」には、ライバル作家の比較「どっち派?」がある。6月の紙面では、太宰治と松本清張が取り上げられ、読者の熱き思いが寄せられている。太宰は過去の作家のイメージが強く、松本は最近の作家と思われがちだが、二人とも1909年(明治42)生まれ。今年、生誕110年を迎える。

 名編集者で知られた、粕谷一希氏は生前、筆者との会話で「万巻の書に囲まれた空間は心地よく、膨大な書籍の中から掘り出しものを発見したときの喜びはひとしお」と語っていた。東京・豊島区の名誉図書館長も務めていただけに、書物への愛着はひとかたならぬものであったに違いない。

 筆者は仕事柄、エネルギー関連の読書に偏ってしまいがちだ。忙しさにかまけて書店から足が遠のく。活字のシャワーを浴びないと。鉄道会社のキャッチコピーをもじる。「そうだ本屋、行こう」。

(あべ)

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