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第80回 (2019年11月13日)

 自宅の絨毯(じゅうたん)を新調しようと近所の専門店を覗いたところ、年代物の赤い逸品を勧められた。店主曰く「いい色でしょう。現行の染料ではこの赤みが再現できません。地球温暖化の影響で、染料に使う植物の生育条件が変わったためです」。真偽はさておき、温暖化の余波は意外なところで出ているようだ。

 「風が吹けば桶屋が儲かる」。何かの事象が他のどこかで意外な影響を及ぼすことの例えだが、温暖化関連でいえば、夫婦円満が温暖化を防ぐなんて説もある。離婚で世帯が分裂すると、家庭のエネルギー利用効率が低下し1世帯当たりの二酸化炭素排出量が増えるためだとか。石油関連では、密漁グループの跋扈で、電線が通らない山奥のサケ・マス養殖場の重油消費が増えた例がある。密漁被害を受けた養殖場が防犯のため、重油を燃料とする自家発電で夜通し照明を焚くようになったという。

 意外な現象を発見し、記事にするのは記者業で最もやりがいのある部分の一つだろう。昨今は温暖化対策としての脱化石燃料、トラック運転手不足を背景とする働き方改革などが叫ばれているが、その裏ではどこかで何がしかのしわ寄せがあるかもしれない。こうした変化を捉え、伝えていきたい。

 さて、先の赤い絨毯は、貴重な染料を使った逸品よろしく目が飛び出るほど高価だった。良い物が安く買える。我が家の絨毯事情に関して、そんな意外な展開は望むべくもなく、店主に苦笑いを返すほかなかった。

(西江)

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