第9回 (2014年8月29日)
那覇泊港からフェリーに揺られて3時間半、青磁色の遠浅の海がまぶしい久米島。ここでは新たな取り組みが始まっている。海洋温度差発電だ。久米島には600メートル超に達する海洋深層水がある。海洋深層水は水質の安定に特徴がある。生活排水などによる河川水が持ち込む汚染された化学物質の影響を受けないこと、太陽光が届かないためプランクトン等が生育せず、有害な雑菌も表層水に比べて大幅に少ないことが水質を安定させている。これを利用して、久米島では車海老の養殖、スパ運営なども展開している。居酒屋では車海老が本土の半値で食すことができる。スパは海水なのにさらっとした肌触りでなんとなく気持ちいい。そして、もうひとつの特徴は水温が低位で安定していること。これが発電に結び付いたらしい。久米島の表層の海水は25~30度と温かく、深層水は5~7度程度と安定して低く、この温度差を利用して電気を作っているとのことだ。発電には水温の高低格差が年間通して平均20度は必要だという。この条件を久米島の海は満たしているのだ。仕組みは火と水を使う火力発電に似ている。異なるのは火と水の代わりに2つの温度の異なる海水を使うこと。深層水と表層水を取り込み、アンモニア水など沸点の低い媒体を表層水で気化させ、その蒸気で発電タービンを回す。発電後の気化した媒体は深層水で冷やして液体に戻す、再度、表層水を使ってそれを気化するといったことを繰り返す。仕組みを知ると「なるほど」と唸るが、人の頭はいろいろと考え付くものだと感心するしかない。こういったことを説明してくれた土地の人は少し誇らしげだ。
この発電事業に加えて、このところ一部のメディアでも紹介された熊本の廃油利用のバイオディーゼル燃料や、数年前から実施されている宮古島のサトウキビから生産するバイオエタノールなど、地産地消のエネルギー製造の取り組みなどを見聞するにつけ、日本は鉱物資源こそ乏しいものの、水、水産、森林、海洋などの資源に加えて、豊かな人的資源が揃っているものだと、日本の土地の人である私も少し口角が上がる。
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