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第13回 (2014年11月27日)

 朝晩の冷え込みが少しずつ増してきた。部屋を暖めようとエアコンのスイッチを入れれば、すぐさま暖気が噴き出してくる。就寝前にタイマーをセットしておけば、目が覚めるころには部屋はポカポカだ。
 私が子供のころはそうはいかなかった。まずはマッチに火をつけて、灯油ストーブの芯に灯し、赤い炎がメラメラと大きくなるのを、手をこすりながらじっと待っていたものだ。灯油タンクが空になれば、寒い玄関に置いてあったポリ容器から補充しなければいけない。暖を取るのも一仕事だったのだ。
 学校でも灯油ストーブにまつわる思い出がある。教室前方の隅に置かれたストーブの周りには、休み時間になるとクラスメートが集まってきて、いろいろな話しに花を咲かせた。気になる女の子が隣に立てば、チャイムがなって次の授業が始まってもすぐには離れがたく、「早く席に着きなさい!」という担任の声に押されてしぶしぶその場を離れたものだった。
 しかし、家庭でも、学校でも、灯油ストーブのある風景は姿を消しつつある。それに伴い、灯油需要の減少にも歯止めがかからない。資源エネルギー庁の統計によると、2013年の灯油の国内販売量は1,801万キロリットル余。ピークだった2002年から4割以上も減っている。北海道や東北地方といった寒冷地でさえ、暖房器具は灯油から電化へと切り替わりつつある。
 灯油ストーブに対する思い出はあるけれど、だからといってそのころに戻るべきというわけではない。コスト、環境への負荷、利便性・・・さまざまな観点から、それぞれにとってベストな選択をすべきなのは言うまでもない。ただ、ゆらゆらと揺らめくストーブの炎にまつわる思い出はずいぶんと遠い昔になったものだと思う。
(二川)

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