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第15回 (2015年6月5日)

 「目に青葉、山不如帰、初鰹」。陽光が眩しく、爽やかな風が頬に感じられた季節は束の間。季節外れの「暑い春」が過ぎ、日本列島は梅雨を迎えた。春夏秋冬の四季の中でも天候が目まぐるしく変わるこの頃とはいえ、季節は確実に移ろっている。それにしても、季節の変わり目に心を躍らせ、自然の恵みに心慰められていたのはいつ頃までだったろうか。
 自然の恵みである陽の光や水、風。いまでは自然エネルギーとして発電にも利用され、再生可能エネルギーの大半を占めている。東日本震災後の原発稼働停止により一層注目を浴びるこれらは、生活への有効活用が重要視されがち。私たちが、自然に恵まれた地球に暮らしていることだけに思いを馳せる時間は限られているように感じる。エネルギー情報を発信する会社に勤めているからなおさら、例えば天候がどのようにエネルギーの燃料価格や電力などに影響を与えるかなどに目を向けがちで、純粋に自然の恵みに身を委ねることが難しくなっている。
 自然の恵みであるはずの太陽や水、風などが、時には敵対視されることだってある。「紫外線は美容に良くないですよ」、「除菌されたミネラル豊富なこの水は体に良くてお奨め」、「風に運ばれる黄砂や花粉対策に優れた商品」、などなど。地上波、BS、CSなどテレビチャンネルを切り替えるたび、目に飛び込んでくるのは健康、美容関係のコマーシャルばかり。「自然の恵みを享受するには様々な防御策が必要ですよ」と、テレビから日々、言われ続けているわけだ。
 久しぶりに自然に触れてみたい。そんな思いに駆られ、去る5月の日曜、東京近郊に足を伸ばしてみた。5月にしては暑いけど、緑輝く草原を吹き抜ける風は気持ちいい。道端に目を向けると「あれっ、太陽光パネルが」。川のせせらぎに耳を傾けると、家人から「ああ、のど乾いた。えーっ、ペットボトル忘れたの?」。
(盛)

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