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第29回 (2017年11月1日)
北海道では初雪の便りが届き、今年も暖房が恋しくなる季節がやって来た。
さて、唐の白楽天といえば「長恨歌」など、華やかな詩のイメージがある一方、「新楽府」という社会を風刺した分野の詩人という側面も持つ。その中に「炭売翁」という、炭を商う老人を主人公にした詩が残っており、「心憂炭賤願天寒」という一節がある。「炭の値段が安くなるのを心配し、寒くなることを願っている」という意味だ。
リム情報開発でジャパン海上製品を担当しているが、冬場の灯油を溜め込む話を取材先の担当者としていると、この一節を思い出す。今年は暖冬なのか、いつから需要が出始めるのか、先物価格の動きなど。二十一世紀の我々も、考えていることは千年以上前に白楽天が見た情景とあまり変わらない。
燃料転嫁が進んだとはいえ、寒冷地で灯油に対する需要はまだまだ強い。暖かさが格段に違う上、ストーブの上に鍋を置いてお汁粉、シチューなど煮炊きに使え、乾きにくい衣類を近くで暖めたりと、直火の楽しさがある。料理のにおいで夕食が待ち遠しくなった記憶など、家族の団らんに一役買っていることも灯油が使われる理由だと思う。
人は何らかの熱源で暖をとり、その傍で親しい人と時間を過ごしてきた。千年後のエネルギーが何なのか知識は持ち合わせていないが、暖かい部屋にいる家族が食卓を囲んで、「昔は、灯の油って書く燃料を使っていたんだって」そんな会話が交わされているような気がする。
(工藤)
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