第3回 各発電方式 パートⅠ(2015年1月21日)

東日本大震災後に原子力発電の稼働が停止した以降、火力発電の稼働率が上昇。今後の発電方法を考えるうえでまずは基本を再度知ろうと、燃料の種類による発電の違いについて調べた。その第1回目として、一般電気事業者による原子力発電、ガス、石油、石炭による火力発電の特徴について勉強会を行った。特徴について下記に簡単にまとめる。

各発電方式別特徴

石油火力 LNG火力 石炭火力 原子力
発電の仕組み
汽力発電
燃料を燃やすことで放出される熱で水を沸かして、水蒸気を作る。水蒸気で蒸気タービンを回すことによって発電する。
内燃力発電
燃料を燃やすことで放出されるエネルギーで内燃機関を回すことによって発電する。内燃機関はガスタービン、ガスエンジン、ディーゼルエンジン
コンバインドサイクル発電
ガスタービンが放出した熱で汽力発電も行う。2重発電のため、熱効率は高い。ガスタービンの始動性が良い。
    石油火力発電と同様
石油火力発電と同様
・沸騰水型炉(BWR)
・加圧水型炉(PWR)
メリット
・液体なので、使いやすい。天然ガスより貯蔵しやすい。
・出力調整は石炭より柔軟にできるため、ピーク電源として運用される。
・設備の建設費用は石炭発電より安価。(石油19万円/kW、石炭23万円/kW)
・CO2排出量少ない、NOx、Sox排出量も小さい
・発電量の調整が比較的簡単
・生産地分散--供給の安定
・調達コストが安価なうえ、変動が小さい
・世界に広く分布しているうえ、確認可採年数が大きい
・安定的な発電が可能
・燃料のウランの特性(安定して輸入できる。少量で多くのエネルギーが得られ、輸送や備蓄もしやすい。使用済燃料を再処理することで燃料のリサイクルができる)
・電気料金の安定に役立つ
・発電時にCO2を排出しない(ウラン燃料が核分裂した時に発生する熱を利用して発電している。地球温暖化防止対策)
デメリット
・産油地域の動向に依存する。第二次世界大戦以降、1970年代前半まで普及。しかし、70年代のオイルショック以降は、石油火力発電所の新設は禁止。石炭、LNGなど他の燃料に転換する。あるいは、これらとの混合となっている。
・燃料コストが原油価格の激しい変動に左右される。資源の枯渇。
・現在、石油火力発電所の老朽化。効率悪い。
・CO2など環境問題。CO2排出量は天然ガス発電より多い。
・設備投資(貯蔵、油槽、耐低温設備コスト)
・単位熱量あたりの輸送コスト高い
・石油、石炭に比べ輸送効率が悪い
・プロジェクト開始に時間がかかる
・燃料調達の硬直性
・二酸化炭素など地球温暖化につながる物質の排出量多い
・発火点が高く、稼働の柔軟性が低い
・安全確保対策・放射線対策が必要
・福島第一原発の困難な廃炉・汚染水対策
・再稼働に時間がかかる
・老朽化
・高レベル放射性廃棄物を処分する場所が決まっていない
・核燃料の再処理のコストが高い
熱効率 40%前後 (ただ、コンバインドサイクル発電の場合、60%まで)
汽力発電 42-45%
CC 42-57%
ACC(MACC) 38-60%
42~46% 一般的に32~34%

参考出展(図)

参考文書(原子力について)

1.現状
電力各社の原子力発電所で19日午後5時50分現在、すべての原子炉が運転を停止している。(リムマーケットニュース:[原発運転状況1月19日]運転中のプラントはなし、先週末と変わらず)
・安全確保対策が必要
東京電力福島第一原子力発電所の事故を教訓として、炉心冷却機能や電源の多重化、浸水対策などに取組んでいる。
また、ストレステストにより安全裕度の定量評価も行っている。(参考:電事連)

2.問題点(環境問題含む)
(1)福島第一原発の廃炉・汚染水問題
廃炉・汚染水対策
3つの基本方針
i) 汚染源を取り除く
ii) 汚染源に水を近づけない
iii) 汚染水を漏らさない

廃炉に向けた取り組み
4号機使用済燃料プールからの燃料取り出し
平成25年11月18日から燃料取出しを開始。平成26年11月5日に、リスクの高い全ての使用済燃料の移送を完了。平成26年12月22日に全ての燃料の移送が完了。
(参考:資源エネルギー庁廃炉・汚染水対策ポータルサイト)

(2)高レベル放射性廃棄物の処分
高レベル放射性廃棄物
原発で使い終わった燃料から、再利用できるウランやプルトニウムを回収すると、放射能レベルの高い廃液が残る。この廃液はガラス原料と溶かし合わせて、固めて「ガラス固体化」にする。

処分方法
ガラス固体化は放射線を出す力が強く、人体に影響のないレベルに弱まるまでに数万年以上かかる。人間の管理に頼らない方法が必要。---> 「地層処分」が国際的にも共通した考え方

調査区域の公募
2002年12月には、地層処分の設置可能性を調査する区域の公募が始まったがまだ決定に至っていない。
(参考:電事連)


※用語
放射性廃棄物
我が国では放射性廃棄物は、再処理施設において使用済燃料からウラン・プルトニウムを回収した後に残る核分裂生成物を主成分とする「高レベル放射性廃棄物」と、それ以外の「低レベル放射性廃棄物」と大きく二つに分けられます。(参考:資源エネルギー庁)

放射性
α線、β線などの放射線が出ているということを意味する。放射線の作用で放射性廃棄物は発熱している。

高レベルか低レベル放射性廃棄物
発熱への対処を必要とするかどうかで高レベルか低レベルに分けられる。

(3)再処理
プルトニウムを燃料として利用するため、ウランからプルトニウムにするためのコストが高い

(4)福島第一原発以外の廃炉
日本原電、関電、九電、中電、約40年を過ぎた5基の原発を廃炉にする方針を固めた。(2014/12/25日経朝刊)

(5)再稼働
再稼働が春以降にずれ込む公算が大きくなってきた。九電の川内1,2号機(鹿児島県)は最終段階の認可手続きで足踏み。2番目に合格内定を決めた関電の高浜3、4号機(福井県)は地元同意の手続きが先送りされる見通し。今夏以降か。(2015/1/7日経朝刊)