記者の眼記者の眼

第316回 (2025年10月1日)

 何の下調べもせずに五島列島に遊びに行った。島々を巡ると結構な数のキリスト教会があちらこちらにあるのに驚いた。隠れキリシタン弾圧の過酷な歴史を乗り越え今もミサなどが行われている様子だ。ある島では「キリスト教信者は現在では島民の3割程度かなあ」と、道行く人が推測する。もちろん神社仏閣も点在しており、宗教の共存が感じ取れる。

 
 もうひとつ目に付いたのは丘陵などに林立する陸上風力発電だ。太陽光含めて再生可能エネルギーに力を入れているのが一目でわかる。沖合には浮体式洋上風力発電も設置されていると、タクシーの運転手さんは控えめながら誇らしげだ。最初の1基は日本初の設置だという。7基が稼働を待つ状態で、さらに1基が建設中のはずだとも語る。海に囲まれた島だけに漁を生業とする人も多いが、漁業協調型の発電施設となっているようだ。また、島々のひとつでは潮流発電も実証中。地元の高校生が他の再エネ発電と合わせてその仕組みなどを調べた制作物を船のターミナルに掲示していた。子供から大人まで再エネ発電に関心が高く、島々の将来に思いを馳せ、期待を寄せているように感じられた。

 
 宗教といい、電源といい、多様性への理解とそれらを受容する力に感服させられた。五島列島がモデルケースというわけではないだろうが、こんな風にしなやかさとしたたかさを兼ね備えた五島列島は日本列島の縮図、模範であっていいんじゃないかと夢想した。

 

  

(もり)

 

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