記者の眼記者の眼

第328回 (2025年12月24日)

 「ブラックボックス」とは、内部の仕組みが外部から見えず、動作原理が理解できない装置のことだ。

 

 そんなまさしくブラックボックスがエネルギー業界にも存在する。国際トレーダーの収益構造だ。先般、欧系トレーダーの担当者に取材する機会があった。最近の需要家はエネルギー商品を生産者から直接購入することを好み、トレーダー経由の調達を敬遠する傾向が強いそうだ。トレーダーの売値は、生産者からの仕入れ値に手数料が上乗せされて割高になるという先入観が背景にある。

 

 実際にはトレーダーの多くが世界中に有望なエネルギー権益を保有し、生産者としての側面も持ち合わせている。さらに機動的な売買で戦略的にポジションを構築し、デリバティブを活用した高度なヘッジテクニックを駆使することで、単純に生産コストを元に決定した価格よりも競争力のある価格を提供できるケースもあるという。

 

 トレーダーのもう一つの存在意義は、取引が薄い市場に介入し、売り手と買い手をつなぐことだ。こうした役割は流動性の提供のみならず、トレーダーのポジションにさらなる彩りを加え、将来の収益拡大機会を生む。この辺りまで話を聞いていたが、内容が専門的すぎて自分の理解の限度を超え、その日の取材は終わりを迎えた。

 

 ブラックボックスの中身は実際に中に入らないと分からない。でも入り口からちょっとだけ中を覗いてみたい気もする。そんな突っ込んだ取材をこれからもしていけたらと思う。

 

 

(狩野)

 

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