新春特集=2024年バイオマス燃料、供給不安の波迫る
2023年の輸入バイオマス燃料の木質ペレット、パーム椰子殻(PKS)市況は、冬季電力需要期の需給引き締まり観測から高値圏で取引が開始されたものの、その後は需要減で徐々に値位置を下げる展開となった。 一方、2024年は木質ペレット、PKS市況はともに供給不安が強く、需給は俄かに逼迫するとの観測が伝えられている。 2023年は需要低迷で軟調 PKSの価格高騰の主因と言われているのが、インドネシア政府が国内向けの食用油の確保を目的に実施したパーム油の禁輸措置だ。この措置に伴い、同国のパーム油の生産量は大きく減少し、PKSの供給減に繋がった。インドネシア産PKSの供給逼迫はマレーシア産PKSへの需要増に波及。しかし、マレーシアでは新型コロナウイルスの感染拡大後、海外労働者の確保が進まずにパーム油生産が落ち込んでいたことから、需要増に供給が追い付かず、需給タイト感が強まった。 ロシア産木質ペレットの流通停止や北米ペレット生産コスト高騰を受け、欧州向けに東南アジア産ペレットの需要が強まると予想されていた。しかし、欧州が暖冬で燃料需要は伸びず日本では既存バイオマス発電所で火災や設備トラブルも頻発したため、発電事業者によるスポット購入余力は縮小した。
出所:リム情報開発バイオマスレポート
PKS輸出国のインドネシア、マレーシアともに雨季が明ける時期が例年より遅く、アブラヤシの収穫量が減少した。これに伴い、現地サプライヤーによる搾油工場(ミル)からのPKS原料調達コストが下がらず、相場は6月ごろまで高値圏で推移。
その後、乾季入りでPKS原料の供給が増えたものの、日本の発電事業者による買い気は弱かった。固定価格買取(FIT)制度のもとで運用している発電事業者は、2024年4月から第三者認証を取得したPKSのみを使用する必要があるため、在庫積み上げを控えたためだ。 また、複数の新規バイオマス発電所の立ち上げが遅れたことも需給緩和に繋がった。 2024年は供給不足を懸念 一方、2024年は木質ペレット、PKSはともに供給不安が強まりそうだと市場関係者は語る。木質ペレットは、米国大手サプライヤーの経営が悪化しており、同社は既存顧客と結んだ契約内容を見直す方針という。ベトナムのサプライヤーのなかには、東南アジア産の引き合いが増えると予想し、強気姿勢を示す向きもいる。 第三者認証を取得せずとも販売可能な輸出国の地場企業向けや、日本以外の国への輸出が増える可能性も指摘されている。
2024年に立ち上げ予定の主な大型バイオマス発電所
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