西日本では昨年10月に精製事業を止めたENEOS和歌山製油所に加え、今年3月には出光興産グループの山口製油所も精製事業を止める予定だ。この半年で約25万バレルの精製能力が無くなるため、商流の変化は必至。4月末の補助金事業終了と合わせ、春は需給環境が大きく変わる可能性がある。

また、暖冬傾向が強いものの、瞬間的な寒波や降雪で需給の変化もあり得る。昨年12月中旬には20度前後から一気に10度前後まで気温が下がるなど寒暖の差が大きく、北陸や中国地区、九州地区でも降雪が観測された。

【中京】1～3月の灯油相場はコストよりも需給動向がカギを握りそうだ。コストは大きな変動はないとみられている。資源エネルギー庁が補助金の支給を4月末まで継続することが決まっている。このため、原油相場が大きく上がろうが下がろうが、国内卸価格は一定の水準が保たれる見通しだ。

キーになるのは需給

とりわけ供給面は強弱材料が入り交じる。ENEOSは昨年11月以降の灯油販売枠を支店ごとに前年実績ベース9割に設定した。広域エリア間の出荷調整を制限することで不足気味の内航船での転送量を抑える。

また、海外市況の高騰やドル高・円安の進行で採算が悪化している輸入を減らす狙いもある。こうした動きにより中京地区の元売り販売枠が不足気味の卸業者が出た。最大手元売りの販売枠カットの影響は小さくない。出光興産は、販売枠カットは行っていないものの、前年実績を上回る引き取りは認めない方針を示しているようだ。寒波到来で需要が急増すれば、中京地区の需給が逼迫するおそれもあるという。
　ただし、内航船の不足と元売りによる地区ごとの販売抑制は、中京地区に海上玉が流れ込む要因になりそうだ。最需要地の北海道に転送できない製油所玉が9号地に荷揚げされる可能性がある。元売りの供給引き締めで細った製油所玉の不足を補うことになれば、中京地区全体の需給緩和につながりそうだ。


【阪神】関西陸上市場は、燃料配送に使うタンクローリーの確保がこれまで以上に重要性を増す1年になりそうだ。

昨年10月、ENEOS和歌山製油所が精製事業の終了を受け、和歌山県の需要家に対して堺製油所など、近隣から燃料供給することになった。府県をまたいだ配送でローリーの走行距離が延びればローリーの配送効率がその分低下することになる。

重油の配送が焦点

重油を積むタンクローリーは白油対比で台数が少ない。市場関係者の間では精製終了に前後し、重油ローリーの定期傭車囲い込み、オーダー締め切り時間を前倒しといった方策を講じる卸業者も現れている。

　もっとも、和歌山製油所の精製終了を主因とする配送の混乱は「いまのところ限定的」(卸業者)と伝えられている。和歌山県の中でも大阪に近い北部の需要家はもともと堺製油所の商圏とされ、精製終了の影響を受けにくい。それでも「大阪から和歌山南部に向かうローリーが増えれば大阪や京都など和歌山以外に走るローリーが確保しづらくなるのは当然の流れ」(別の卸業者)。

2024年はローリー運転手らの時間外労働時間の上限が規制される「2024年問題」も控えており、市中では今後の安定配送に対する警戒感が伝わっている。


【四国】この時期は四国でも暖房用灯油や重油の需要増に期待する声が多い。しかし、12月入りしてから気温が10度以上と高めの日が多く、卸業者は灯油の需要鈍化で出荷が伸び悩む。昨年も暖冬傾向で出荷量は前の年に比べ2割減になったとの話もちらほら。気象庁によると、2月までの気温は西日本で平年より高め。降雪量も冬型の気圧配置となりにくいため少ないという。市場関係者は最近の傾向として、ガソリンは系列回帰が著しく、「余剰玉を持つ卸業者は小売業者向けに踏み込んだ価格提示がある」という。
　また、軽油は「インタンク向けが同業や小売り業者向けより1円以上も安いので太刀打ちできない」(同)とし、「灯油や重油の需要鈍化は致命的」との声が寄せられた。

　四国地方でも物流や運送業界の「2024年問題」が前倒しされ、ローリー不足が深刻な状況。トラック運転手不足でローリーがフル回転できていないようだ。「オーダーは多くないのにローリーは満車状態。価格は二の次でとりあえずローリーを押さえるのが最優先。冬場の灯油は命にかかわるため、配送の遅れや見送りはあってはならない」(市場関係者)。


【福岡】2024年は供給面で大きな変化が出る1年となりそうだ。3月に出光興産グループの西部石油山口製油所(日量12万バレル)が精製を停止する。近隣の中国地区や北九州地区の陸上出荷を中心に、供給体制が大きく変わることになる。

また、太陽石油の四国事業所(日量13万8,000バレル)は大型定期修理を控えているとされる。2022年に高圧ガスの漏えいに関する通報および補修工事許可申請等の手続き漏れで2年間高圧ガス認定取得が出来ない行政処分を受けた。今年は上期6～7月と下期12～1月に定修のためトッパーを停止すると複数の市場関係者が伝えている。元売り間バーター契約の見直しも進む可能性が高く、この影響で九州地区の油槽所への海上転送に大きな変化が出ることは必至だ。太陽石油の長期定修に伴い西日本のスポット市場は例年以上にタイト化する可能性がありそうだ。