どうなる今冬のエネルギー供給2023(中)-原油、アジア、国内
【原油】 今冬の原油市場は、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」に加盟する産油国が足元の減産体制を維持した場合、供給が逼迫するとの懸念が根強い。OPECプラスは昨年11月から、日量200万バレルの協調減産を当面継続するとともに、今年5月から一部産油国が自主減産を進めている。サウジアラビアは7月に開始した日量100万バレルの自主減産を9月末まで延長する。ロシアも9月に日量30万バレルの輸出削減を実施する。OPECプラスは当面、現行の減産体制を維持するとともに、原油価格の下支えを目的に今後も追加措置を取る用意があると強気姿勢を崩していない。 一方、原油の実需は上向いており、国際エネルギー機関(IEA)によると、世界需要は7月に日量1億280万バレルと過去最高を記録した。さらに、消費大国のインドと中国を合わせた需要回復は顕著で、両国を合わせた原油消費量は年内に日量200万バレル増加するとIEAは予測している。こうした実需の強さを受けて、今年下半期に原油は日量180万バレルの供給不足に陥り、北海ブレント原油先物相場は100ドルを目指す可能性がある、とIEAは需給逼迫による今後の相場高を予想している。ただ、さらなる需要増が一段と鮮明になった場合、OPECプラスは減産体制を解除し増産に転じると見る向きもある。 【アジア石油製品】 石油製品のなかでも、冬場に向けて中間品の需給に注目が集まっている。欧米の供給懸念がアジア相場を左右する要因となりそうだ。欧州は熱波の影響で工業用水減少と製油所の装置不具合が頻発し、製油所の稼働率が切り下がっている。また、降水量不足を背景に欧米では運河の水位も低下しており、石油製品の転送も停滞している。欧州では秋以降、農業用や暖房用に軽油需要が高まるなかで、在庫の積み上げが進まず、中東、アジア積み品への買い気が高まっている。 石油会社はクラックマージン高騰を背景に、軽油の精製を増やしジェット燃料/灯油の精製を抑えている。航空需要増加も相まって、ジェット燃料/灯油のクラックマージンも底堅い状況だ。日本国内との市況対比で海外市況高となっており、日本の元売り、商社は輸入を控える傾向にある。冬季の日本国内灯油の需給に影響が出そうだ。 中間品のクラックマージンが高騰するなか、需要の乏しさからナフサ市況は依然として軟調だ。採算性の観点から「製油所稼働率を引き上げるのが困難」(北東アジアの石油会社)となっていることも、中間品の需給逼迫に拍車をかけている。中国による輸出再開でどの程度市場が冷やされるかに注目が集まっている。 一方、電力会社が昨年頻繁に購入していた重油について、今年は買い気が乏しい。国内の主要な発電燃料である液化天然ガス(LNG)や石炭価格が昨年に比べて割安に推移しているため、「電力会社が敢えて重油を買う必要はなさそう」(市場関係者)との見方が強い。
9月末で終了予定だった補助金事業は、足元の原油高と円安を受けた小売価格の上昇を受け、岸田総理は8月22日、10月以降の延長を関係閣僚に指示した。夏場はガソリンや軽油の小売価格に目が行きがちだが、下期は灯油シーズンに入るため、現行の補助金制度設計見直しの有無、さらにその期限も灯油市況に影響してくる。下期の灯油入札や産業燃料交渉の相場観が大きく変わるのは必至だ。 直近の灯油在庫は石油連盟によると、8月12日現在で東日本が前年比28.2%増の約151万kl、西日本が同10.6%増の約61万5,000klと、十分に積み上がっている。前年の在庫がここ数年間で最低水準だったため、その反動も大きく、必ずしも9月末の補助金終了に合わせた事前積み上げばかりではないものの、足元でタイト感はほとんどない。 気象庁が8月22日発表した9~11月の3カ月予報によると、全国的に気温は高めに推移しそうだ。北海道の気温は10月が平年並みまたは高め、11月が高めと、過去の灯油商戦と比べるとスタートダッシュはやや期待薄。 また、資源エネルギー庁がまとめた北海道の灯油小売価格は8月21日現在、1リットルあたり120.3円と、前週から2.1円値上がり。前年比でも1.2円高く、これまでの価格、在庫水準、気温を考慮すると、下期の灯油商戦はやや向かい風でのスタートとなりそうだ。
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