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第66回 ~電力買い取り制度が曲がり角に~の巻 (2014年10月3日)

大手電力会社が、再生可能エネルギーの買い取り契約の受付を中断したっていうニュースが波紋を投げかけているね。一体どういうこと?

まず、ここでいう再生エネルギーが何かってことだけれど、これは太陽光や風力などで発電した電力のことね。地球温暖化対策の一環などとして、世界各国で再生エネルギーの普及に注目が集まっているでしょ。日本でも再生エネルギーに対する関心はここ数年どんどん高まっていて、その普及を促進する狙いで導入されたのが「固定価格買い取り制度」よ。

固定価格制度・・・確か、太陽光や風力などで発電した電気を、大手電力会社が買い取るという仕組みだったね。

その通り。買い取り価格は発電方法などによって国が定めていて、例えば非住宅用太陽光(10kW以上)はキロワット時あたり32円(税別)。これを20年間にわたって買い取り続けるの。新規に太陽光発電の事業に参入した事業者の立場からすれば、たくさん発電して、大手電力会社になるべく買い取ってもらいたでしょ。大手電力会社は最終的に消費者の電気料金にコストを上乗せするから、私たち国民全体で支える制度って言えるわね。

制度はいつから始まったんだい?

正式には2012年7月よ。2009年ころから導入の検討が始まったのだけれど、実際、2011年3月の東日本大震災を契機に電力に対する関心が高まったから、12年夏に制度が始まると電力事業に参入する事業者が一気に増えたのね。

でも、大手電力会社はその買い取り契約を中断したんだよね。一体なぜ?

大手電力会社が企業から電力を買い取る場合、自分たちの送電網を使うのだけれど、当初考えていたより多くの事業者が参入の意欲を示しているの。こうした事業者が国に申請した通りの量を発電をして、大手電力会社に買い取ってもらおうとすると、送電網の容量を超えてしまう恐れが出ているそうよ。そうなると大規模停電が発生する恐れがあるのよ。海外でも、ドイツなどでも「消費者の負担が大きすぎる」といった理由から、制度がうまくいかなくなっているそうよ。

再生エネルギーを普及させようと実施したはずなのに、なんだか皮肉な結果になっているんだね。

いまのところ買い取りの中断を表明しているのは北海道、東北、四国、九州、沖縄の5電力会社よ。これらの会社が管轄するエリアは、大規模な太陽光発電が可能な土地がある一方、人口が少ないこともあって、発電量が送電網の容量をオーバーしやすいとも言えるのね。例えば9月下旬に「事業者からの買い取りを保留します」と発表した九州電力。管轄エリアである九州地方は、太陽光の買い取り制度に申請した設備の能力、既に発電している設備量が全国の4分の1にも達しているそうよ。それだと、さすがに九州電力が買い取りを躊躇してしまう気持ちもわからなくはないわね。

環境への負荷が少ない再生エネルギーの普及を図るというアイデアは素晴らしいと思うけれど、急激に増やそうとすればどこかに無理が生じてしまうね。
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