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第54回 ~スマホ一つで勝ち残れ!?ガス料金と雲の巻 (2013年12月27日)

ニチガス(日本瓦斯)が都市ガス4社を完全子会社化 するんだってね。ニチガスっていうと、液化石油ガス(LPG)の販売も都市ガスの供給も手掛ける、大手ガス会社だよね?今回の子会社化は迅速な意思決定のためって発表してるけど、実際のところどんなメリットがあるんだろう?

う~ん、結局はコスト削減が目的だと思うわ。電気料金のように、ガスも小売価格の自由化が進んでるでしょ?エネルギー業界の競争がどんどん激しくなるなかで利益を確保して生き残るために、今回の子会社化を決断したはずよ。

ちょっと待って。ガスの小売価格が自由化になってきてるって、どういうこと?

そうね、順を追って説明するわ。都市ガスの料金体系は1995年にガス事業法が改正されて以降、自由化が進められてきたの。今のところ都市ガスの小売価格は、年間の契約使用量が10万立方メートル以上の大口需要家に対して自由な価格設定が可能になっているのよ。

大口需要家っていうと、工場やホテルなんかが該当するね。そういうところに対しては、自由な料金設定ができるってことか。じゃあ僕たちみたいな一般家庭に対するガス料金ってどうなってるの?

都市ガスの料金は『公共料金』という位置づけだから、『一般ガス事業供給約款料金算定規則』という経済産業省の省令に基づいて、計算方法が細かく定められているわ。基本的には、都市ガス会社がガスの原料となるLNG、LPGを海外から買い付ける際に支払ったお金や、ガス導管の管理にかかる費用を原価として計上して、適正な利潤を加える形にしているのよ。具体的な料金の算出方法については、ガス会社がホームページで公開しているわよ。

東京ガス ガス料金のしくみ

大阪ガス 料金体系

ふ~ん。都市ガスをいたずらに高い価格で売りつけることはできないんだね。LPガスも法律で価格が決められているの?

そこがポイントね。LPG……プロパンガスって言った方が馴染みやすいかしら……は、都市ガスのような公共財ではなくて、一つの商品としてみなされているの。だから販売店によってプロパンガスの価格は千差万別、自由に料金を決められるのよ。

そっか。 第7回 でも都市ガスとLPGの違いについて学んだけど、価格面でも異なる点があるんだね。

ええ。でも、都市ガスの価格体系が全面的に自由化されると、都市ガス会社とLPGの販売会社との間で、一般家庭、つまりお客の奪い合いになることが予想されているわ。料金競争の結果、都市ガス会社が今よりも安い価格で家庭向けに供給できるようになったら、今までプロパンガスを使っていた家庭も都市ガスに切り替えるようになるかもね。最近の調査では、LPGから都市ガスに切り替えた戸数が1年で5万件近くもあったそうよ。

うーん、 電気料金の自由化は聞いたことがあったけど 、ガス業界でも自由化が進んでいるのか。

そうよ。電気vsガスのような異業種間だけじゃなくて、ガス業界のなかでも競争が激しくなっていく、そんな時代なのよ。

話は戻るけど、今回のニチガスの件も、こうした都市ガスの価格自由化と関係があるんだね?

うん。実際に ニチガスのプレスリリース でもそう謳ってるわ。読んでみる?

どれどれ?……う、う~ん……。難しいね。

さっきの説明と関係あるのはここよ。『エネルギー業界が、自由化とともに集約化に向かう事業環境に於いて、様々な資本連携が適時必要なスピード感を持って打てるよう』、完全子会社化を決定したって書いてるわ。

集約化っていうのは、つまり会社の合併・統合が立て続けに起こるような環境ってことかな?そういう状況でもスピード感のある事業を展開していこう、ってことだね。でも具体的にスピード感のあるビジネスってどういうこと?

言葉だけだとイメージしづらいわよね。ただ、今回のニチガスのケースでは、分かりやすい実例があるの。それが 『雲の宇宙船』 よ。

雲の宇宙船!?なんでそんなネーミングなの?

興味あるでしょう?これはインターネットの能力を有効活用した業務システムなの。クラウドって聞いたことあるでしょ?

うん、それならあるよ。ネットワーク上に文書ファイルを保存したり、アプリケーションを共有できるシステムだね。あっ、クラウドだから雲ってことか!

そう。現場の人がプロパンボンベを家庭に配送したり、ガスの使用量を検針したりするときに、スマートフォン上のアプリを使って、クラウドセンターに保存してあるデータを読み込んで上書きするの。リムゾーさん家の今月の使用量が30立方メートルだったとしたら、その場でスマートフォンから記録できるってわけ。

へ~、そうするとわざわざ事務所に戻ってから点検票に記入したりしなくて済むわけだ。それは確かに時間もお金もカットできそうだね。

この雲の宇宙船を導入したことで、ニチガスは業務システムを半分近く減らすことができたのよ。その影響もあってか、ニチガスは3期連続で過去最高益を更新する勢いなの。今のところはグループ内でニチガスだけが雲の宇宙船を採用しているそうだけど、今回完全子会社化された4社も順次このシステムを使うことになると思うわ。雲の宇宙船は日本全国、そして世界各国への展開も目指しているスケール感のある事業なのよ。

なるほどね~。こういう画期的なシステムがあるなら、激変するエネルギーの業界のなかでも、スピード感を持って事業展開していけそうだね。今回の完全子会社化で無駄をそぎ落とし、グループが一体となって競争力のあるビジネスモデルを構築していく。それがニチガスグループの狙いなんだろうね。

このコーナーに対するご意見、ご質問は、リムゾー&リミーまで
電話 03-3552-2411
メール rimzo@rim-intelligence.co.jp
(文:LPGチーム 志賀)
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ガス事業法が改正され、年間200万立方メートル以上を消費する大口需要家向けの価格が自由化された年は?

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