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第67回 ~2015年、OPECは存亡の危機?の巻 (2014年12月24日)

とうとう2014年も終わっちゃうなあ。それにしても、今年の下半期は新聞やテレビで原油のニュースが毎日のように大きく取り上げられていたね。エネルギー業界にとっては忘れられない1年になったね。

本当ね。7月まではニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)で、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)の先物価格は1バレル=100ドルを超えていたのに、12月に入ると60ドルを下回る水準にまで値下がりしちゃったものね。わずか半年で半分くらいになっちゃうなんて、去年のいまごろには想像もつかなかったわ。

あらためて復習したいんだけど、どうして原油価格はこれほど急激に落ち込んでしまったんだろう?

一番の理由は、世界的に需要が伸び悩んでいる一方で、供給が多すぎるのが原因と言われているわね。

需要といえば、ヨーロッパの景気はずいぶんと低迷しているみたいだし、中国も景気拡大が鈍ってきているんだよね。

供給の方では、アメリカを中心としたシェール革命のおかげで、オイルやガスが十分に採れるようになったわ。それに、石油輸出国機構(OPEC)が、11月末に開いた総会で、「原油の生産量を削減しないぞ」と決めたことで、「世界的に原油が余っちゃう」という雰囲気に歯止めがかからなくなっちゃったのね。

OPECのことは学校で習ったことがあるよ。第二次世界対戦の後、欧米系の巨大石油会社が油田開発、原油販売の実権を握っていたのに対抗して、1960年9月にベネズエラ、イラン、クウェート、サウジアラビア、イラクの5カ国が集まって結成したんだよね。自国で採れる原油の権益を守ろうという強い意志が伝わってくるね。

その通り!そして、少しずつ欧米系の石油会社から油田開発、原油販売などの権益を取り戻していったのね。そのときどきでOPECの影響力に強弱はあったけれど、それでも世界の原油市場では中心的な役割を果たしてきたのよ。

だけど、今回は原油価格が急落しても、その力を発揮できなかったんだよね?

OPECの中でも特別に影響力を持っているサウジアラビアが、「私たちは減産しませんよ」って決定したのね。いろいろな事情があるようだけれど、一説には世界的な原油のシェアを減らしたくないという狙いがあるようよ。仮に生産を減らすと、台頭してきたシェールオイルにシェアを奪われてしまうのでは、という懸念があるのね。

サウジアラビア以外のメンバーも減産しないっていう決定には賛成したの?

実はそうではないの。ベネズエラとかイランなんかは、「減産すれば原油価格が上昇して、国の財政が潤う。ぜひ減産しましょう」という考えよ。こうした国々は原油による収入が国家予算の大部分を占めているから、原油価格の下落=財政危機につながっているから、減産には賛成できないというわけね。

そうかー。もともと欧米系の巨大石油会社に対抗しようと集まった仲間なのに、実は内部でも意見がまとまらないんだね。

過去にもこうした立場の違いはあったのだけれど( 第17回 逆オイルショックとはの巻を参照)、原油価格がこれだけ落ち込んでいるなかで、OPECの存在感を示すことができなかったのだから、専門家の中には、「もうOPECの歴史的役割は終わった」とまで言う人もいるわ。

政治の世界では東西冷戦が終わり、経済が急成長する中国やインドが存在感を示したり・・・と、第二次世界大戦後も大きな動きが続いているよね。そうすると、原油の世界でも、大きな変化が起こったっておかしくないよね

お兄ちゃん、なんだか急に難しいこと話すのね!どうしちゃったの?!でも、2014年の原油価格急落が、世界の原油を巡る力関係を変えることは十分に考えられるわ。2015年がどんな年になるか目が離せないわね。

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