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第70回 ガスを燃料とした船が増えている? ~の巻(2017年4月19日)

晴海ふ頭公園でお花見なんて珍しいこと考えたわね、お兄ちゃん。

毎年、井の頭公園じゃ芸がないからね。
たまには海を望みながらの花見もいいかなと思ってね。

お花見に来て、大きなクルーズ客船が見られるなんてのもなかなかないものね。

そうなんだよ。
ところで、リミーは船の燃料って何が使われているか知っている?

重油でしょ!
私だってそれくらいわかるわよ。

ご名答!よく勉強しているね!
でも最近はガスで走る船が増えているってことは知っている?

えぇ!?知らなかったわ!
いつごろから普及してきたの?

欧州ではノルウェーやバルト海沿岸国を中心に2007年頃から普及してきた。
もともとは環境規制に対応するためなんだ。

どういうこと?

国際機関の一つである国際海事機関(IMO)が、バルト海など一部の海域で、硫黄分を多く含む重油を燃料とした船が出す硫黄酸化物(SOx)などの有害物質の排出を規制したことがきっかけなんだ。そこから環境にやさしいガス、とりわけ液化天然ガス(LNG)を燃料とした船を造る動きが出てきたんだよ。

そういうことだったの!
日本では普及していないの?

日本ではまだ多くないけど、普及させようと取り組んでいるよ。
IMOが2020年から世界中を航行する船の燃料に使われる重油に含まれる硫黄分の上限を3.5%以下から0.5%以下に引き下げることが決まった。日本を行き来する船も硫黄分を多く含む重油を使うことができなくなるからなんだ。

なるほど!
でも、そうすると、これまで重油を使っていた船はどうするの?

そこが問題で、いま海運業界は頭を抱えているんだ。
硫黄分が規制値より少ない重油や軽油を燃料とすることが解決策の1つとして検討されている。
ただ、これには1つ問題があって、燃料の価格が上がってしまうんだ。コストの上昇分を運賃価格に転嫁できないと、海運会社の収益が圧迫されてしまうと心配されているんだ。

それは大変ね!他に環境規制に対応する手段はないのかしら?

もう1つ検討されている対応策が、スクラバーという重油から硫黄分を取り除く装置を船につけるというものなんだ。そうすれば、これまで使っていた硫黄分を多く含む重油をこれまで通り使用することができる。

それはいいじゃない!
そうすれば、燃料費が上がらないで済むものね。

だけど、これにも問題があってね。
1つはスクラバー設置にかかるコストが数億円かかると言われている。これはなかなか大変な額だよ。
それと、設置スペースを確保するために、貨物を積むスペースを削らなければならない。これは運賃収入の減少につながってしまうんだ。

いずれにしてもお金がかかるのね。
そこで出てきたのが、ガスを燃料とした船ってわけね?

そうなんだ。
これからガスは、船の燃料としての需要がどんどん増えてくるとみられているよ。
このためLNGだけでなく、液化石油ガス(LPG)を燃料とした船の建造を進める動きも出ている。LPG元売りのアストモスエネルギーは2020年頃のLPG燃料船の実用化に向けて取り組んでいるよ。

いずれは重油よりガスを燃料とした船が主流になるかもしれないわね。
それにしても遅めのお花見だったせいで、桜が結構散ってしまっているわね。

本当だ。桜の木がガスガス(カスカス)だ。

今年は寒くて開花が遅れたみたいだけど、犯人はおにいちゃんだったのね。

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