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第78回 地熱発電に温泉水はいらない? ~の巻(2017年8月16日)

リミー、 最近は地球温暖化だの、黄砂だのって、環境問題で世間が騒いでいるから、エネルギープランナーの講座に参加してきたよ

そうなんだ!何か新しい発見はあったの?

もちろんさ〜とても勉強になったよ〜2011年3月11日の東日本大地震以降、国内の原子力発電がほぼ止まっている状態が続いてるよね?代わりに再生可能エネルギーという言葉をよく耳にするようになったのさ。

そうだね。以前お兄ちゃんが再生可能エネルギーには太陽光、水力、風力、バイオマス、地熱、太陽熱などがあるって言ってたよね?

リミー、よく覚えてるね〜えらいぞ! 海外資源への依存からの脱却と二酸化炭素(CO₂)の削減のために、政府も再生可能エネルギーの普及に力を入れているのは知ってるよね?

うん、でもお兄ちゃん。太陽光、水力、風力発電は分かるけど。。。地熱発電については知ってるようで知らないというか、日本は火山が多いので、地熱発電に適しているとか?

地熱資源は火山性の地熱地帯で、マグマの熱で高温になった地下深部(地下1,000~3,000メートル程度)に存在するんだよ。地表面に降った雨や雪が地下深部まで浸透して、高温の流体、すなわち地熱流体となるの。これが溜まっているところを地熱貯留層と言うんだよ。むずかしいかな?

うん~。ということは、火山が多い日本は地熱発電に適しているってことだよね?どうやって電気に変えるの?教えて。

地熱発電は、地熱貯留層より地熱流体を取り出し、タービンを回転させて電気を起こすんだよ。発電方式は複数あるみたいだけど、フラッシュ発電が一般的で、最近はバイナリー発電が増えているみたいだよ。

フラッシュ発電?バイナリー発電?ますますむずかしくなってきたね。

フラッシュ発電は、主に摂氏200度以上の高温地熱流体での発電に適していて、地熱流体中の蒸気で直接タービンを回す発電方式なんだよ。 バイナリー発電は、水よりも沸点の低い二次媒体を使うので、より低温の地熱流体での発電に適していて、地熱流体で温められた二次媒体の蒸気でタービンを回して発電するのさ。

なるほど。でもなぜ地熱発電は普及していないのかしら?

地熱発電は日本に豊富な資源量があるにもかかわらず普及が進んでいないのは、温泉地・観光地への影響と、候補地の多くが国立公園や国定公園に指定されていること、あとコストパフォーマンスが良くないことなどが挙げられるかな。

なるほどね。日本は火山が多く、地熱も十分にあるし、化石燃料のように枯渇の心配がないのに、なぜ知名度が低いのかなぁと不思議だったのよ。

地熱資源が多い地域はすでに温泉街などの観光地になっているところが多いんだ。地中から大量の熱水をくみ上げることで、温泉源に影響する可能性もあるからね。それに事前にこうした調査や発電所の建設工事コストもかかるのさ。

それは困るね。

でもねえ~リミー、2016年10月12日、あるベンチャー企業と京都大学が共同研究で新方式の地熱発電システムを用いた実証実験に成功したと発表したんだ。「JNEC(ジェイネック)方式」と呼ぶシステムで、「温泉水を使用せず、地中熱を吸収し発電する」新地熱発電システムなんだ。

温泉水を利用しないということは、温泉地と観光地に影響を与えないってことね?場所を選ばないってことかしら?

そういうこと。JNEC方式の特徴は、温泉水を地下からくみ上げるのではなく、地上から水を注入し循環させる「クローズドサイクルシステム」を採用した点なんだ。地中深くまで水を循環させる密閉された管を埋め込み、地中熱のみを利用して管内の水を熱し、その蒸気でタービンを回して発電を行う方式なのよ。蒸気は冷却され水となり、また元の管へと戻されるので、温泉水の地熱発電のように、発電に使用した熱水を地下に戻すための還元井の設置も必要ないので、運用コストも大幅に削減できるのさ。

すごいね~これからますます期待できる純国産エネルギーだね。

現在の実証プラントの発電能力は24キロワットと小さいけど、研究開発を続けて、2025年をめどに3万キロワット級の大規模な発電設備の建設を目指しているみたいだよ。 温泉地に影響を与えない、さらに低コストの地熱発電が実現すれば、全国に広がって行くのは間違いないかもね。っていうか、広がってほしいね。

せっかく温泉の話がでたところで、今度温泉につれて行ってね。

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メール rimzo@rim-intelligence.co.jp

(文:林 志穂 )
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地表面に降った雨や雪が地下深部まで浸透して、高温の流体になったものを何という?

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