第81回 石油はあと何年で枯渇する? 埋蔵量増加の謎を解け! ~の巻(2017年9月27日)
お、おい、リミー!? 何だ、この灯油缶の山は!? 家中に積み上げてあるじゃないか!?
ああ、私が置いたのよ。来るべき石油の枯渇に備えて、ガソリンを貯めこんでいるの。「備えあれば嬉しいな」って、言うでしょ。偉いでしょ。
リミー、突っ込みどころが2か所ある。その①は「備えあれば“憂いなし”」だ。その②は、灯油缶にガソリンを入れるのは違法だ。ガソリンを保管するなら、ちゃんとガソリン缶に入れろ。
あ…そうなんだ。
ところで、「来るべき石油の枯渇に備えて」って、どういうこと?
この間、図書館でエネルギーの本を読んでいたら、その本に「石油はあと35年分しか残されていない」って書いてあったのよ。その本の発行日を見たら、なんと1985年だったの。だから、35年後である2020年、つまり、あと3年後には、石油はなくなっちゃうのよ、お兄ちゃん!
多分それは、石油の「可採年数」のことだよ。
可採年数?
そう、原油の埋蔵量を、年間の生産量で割った数字で、あくまで「経済的概念」なんだ。今、地中や海底にある原油を、年間の生産量で割れば、原油があと何年採掘できるかの目安になるでしょ。ただの目安だよ、め、や、す。
なるほど。で、その可採年数によると、石油はあと何年分残っていることになるの?それが問題でしょ?
今は、50年だよ。
ええっ? どういうこと?石油の生産量って、30年前より当然増えているんだから、30年前よりもその「可採年数」っていうのは減るはずでしょ!? 増えているって、おかしいじゃない!? 難しそうなこと言って、私のことだまそうとするのは、やめてくれる!?
別にだます気はないよ。可採年数の計算方法は、このとおり。可採年数 = 原油の埋蔵量 ÷ 原油の年間生産量 つまり、「原油の生産量」が増えたとしても、「原油の埋蔵量」が増えれば、それだけ可採年数は増えることになるんだ。ここ数十年で可採年数が増えたのは、この埋蔵量が増えたためなんだよ。
埋蔵量が増えた? あのね、たった10数年で増えたりするわけないでしょ! 原油は古代の生物が何億年もかかって変化したものだということぐらい、私だって知っているのよ。
確かにそのとおり。この埋蔵量が増えた理由はいくつかあるんだけど、最も大きな理由は、原油の採掘技術が向上したことなんだ。
どういうこと?
「原油の埋蔵量」っていうのは、そもそも「可採埋蔵量」といって、技術的および経済的に掘り出すことが可能な量のことなんだ。つまり、近年の技術の革新によって、採掘可能な油田や、新しく発見された油田が増えた結果、埋蔵量が増加したんだよ。
なーるほどー! じゃあ、技術が発展する限り、人類が原油を使い切るのはまだまだ先ってことね。
そういうこと。この「可採埋蔵量」を決定する要素は、この「技術的」という点ともう一つ、「経済的」っていう面も大事なんだけどね。これはまた次の機会に説明してあげるね。
ぜひ教えて。楽しみにしてるわ。…さて、石油は当面なくならないと聞いてひと安心ね。部屋に積み上げた灯油缶は、まだ当面、使う必要はなさそうね。
じゃあ、あと50年以上、あれを置いとくつもりなのか…。
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(文:橋本 )
「やさしいエネルギー講座」から出題!
原油の埋蔵量を年間の生産量で割った数字で、原油があと何年採掘できるかの目安となる数字は?
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