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第87回 ~二酸化炭素を閉じ込めろ! ~の巻(2017年12月20日)

ふー、ふー。あー、怖かった。

うさりん、どうしたの?慌てて逃げ帰ってきて。

鉄砲を持った猟師に追いかけられてね。途中に大きな穴があったから、そこに慌てて飛び込んでなんとか逃げ切れたよ。

あら。あの穴に飛び込んだのね。実は私が掘ったものなのよ。空気中に排出される二酸化炭素を地中に溜め込む実験が進んでいるというから、私にもできないかと思って試しに掘ってみたの。二酸化炭素などが原因って言われている地球温暖化は、私たち生物にとっても見過ごすことのできない問題でしょ?

え?地中に二酸化炭素を溜め込むって?そんなことが本当にできるの?

地中や海底深くに二酸化炭素を閉じ込める技術は、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)と呼ばれていて、各国で研究が進んでいるわ。日本では北海道苫小牧市で実証実験が進められているわ。2014年に政府が策定したエネルギー基本計画にも、2020年ころのCCSの実現を前提に石炭火力発電の導入を進めるとされているのよ。

一体どんな仕組みなのさ。気体の二酸化炭素を埋めるのって大変そうだけれど。

発電所などからの排ガスから二酸化炭素を分離・回収して、枯渇した油田やガス田に溜め込んでいくのよ。枯渇する以前にどの程度の原油やガスを産出したかで、そこに貯留できる二酸化炭素の量もわかるらしいわ。この技術が確立されると、世界で排出する二酸化炭素の60年分を溜め込むことができるという試算もあるそうよ。

地球温暖化対策の切り札になるかもしれないね!だけど、大掛かりなプロジェクトだからお金も掛かりそうだ。

経済産業省が2016年にまとめた資料によると、現在二酸化炭素貯留1トンあたり約4,200円掛かる費用が、2030年には1,000円程度に低減されると見込まれているわ。

それは期待できるね。もう1つ気になるのが、日本では2011年3月の東日本大震災以降、原子力発電所の稼働が大幅に落ち込んでいて、代わりに石炭や液化天然ガス(LNG)の火力発電所の稼働が増えているでしょ?仮に二酸化炭素を地中に埋めても、次から次へと排出されるんだったら全然追いつかないよね。

そこが問題ね。震災以降、新しい火力発電所の建設が計画されているし。だけれど、環境面の配慮から、建設計画に対して政府(環境省)から待ったがかかるケースも出ているのよ。例えば東燃ゼネラル石油(当時)と関電エネルギーソリューションが千葉県に建設を計画していた火力発電所は、コストや環境面の問題から、今年3月に計画を断念したの。

電力が不足するのは困るけれど、地球温暖化が進むのは食い止めないといけないね。両方を同時に達成するのは簡単じゃないんだね。

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(文:二川 )
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