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第91回 ~世界は急に脱石油もEV化も進まない!? ~の巻(2018年2月14日)

やっぱり、時代は電気自動車(EV)だね。もうガソリンも要らなくなるよ。

確かに、自動車業界でEV化はトレンドになっているね。でも、本当にそんなすぐにEVの時代は来るのだろうか。

来るさ、なんくるないさ。中国では2019年、自動車メーカーに対して一定数量のEV車の製造・販売を義務化するって話だぜ。日本でも2030年には新車の20~30%をEV・プラグイン・ハイブリッド(PHV)にするっていう目標を掲げたみたいじゃないか。それに、”脱石油”の時代が来るって、いま言われてるよ。

なるほど、確かに最近、”脱石油”というキーワードは聞く機会が増えてきたね。でも、本当にガソリンなど石油がすぐ必要なくなるかな?

今の自動車が全部EV化したら、それはもう”脱石油”でしょ!

それはどうかな。世界の石油消費量のうち、自動車燃料向けが占める割合は約3割と言われているね。

3割ってすごいじゃないか。石油消費の削減効果としては十分なインパクトだよ。

ただ、3割のうち、ガソリン車が2割、ディーゼル車が1割となっていて、トラックなど大型ディーゼル車のEV化が進まないと石油消費量を大きく減らすことはできない。積載量が多く、走行距離の長いトラックなどのEV化は難しいと言われているよ。それに、EV化のトレンドをつくった欧州でも、ハイブリッド技術に一日の長があるドイツなどは、ガソリン車・ディーゼル車の禁止を明確に掲げていない。ディーゼル車の廃止にはまだ時間がかかりそうだよ。

でも、ガソリン車だけでも全てEV化すれば、それでも2割!

じゃあ、より現実的な話をすると、国際エネルギー機関(IEA)の年次報告書【世界エネルギー展望(World Energy Outlook)】2017年版では、2040年に世界のEV保有台数は2億8千万台に達すると予測している(現在の世界の自動車保有台数は約13億台)。その石油消費削減効果は日量250万バレルで、現在の世界石油消費日量9,200万バレルのわずか3%に満たない。EVが最大限に普及したとしても9億台、日量800万バレルの削減で、現在の石油需要の9%弱だと試算しているよ。

はぁ、そうなのか、でも何とか全ガソリン車をEV化すれば、1割くらいは削減できるってことじゃないか(もはや涙目)。

その全EV化というのが、そもそも難しいと言われているんだ。EV用の蓄電池として、リチウムイオンバッテリーは短航続距離や長充電時間の問題があったり、バッテリーのカソード(負極)に使用されるコバルトなどの資源は、供給源の60%以上が内紛の絶えないコンゴ共和国に依存している。供給難のなか価格が高騰しているんだ。また、現在の市況や採掘技術では、需要100年分が地中に眠っているといわれるコバルトを採掘することもできず、つまりEVのバッテリー源供給がボトルネックとなっている。大量生産が不可能ということなんだ。

・・・

ただ、超高容量のリチウム空気電池やコバルトを使用しない非リチウム系電池の開発などは、各自動車メーカーでも進めているから、パラダイムシフトが起きる可能性はあるね。

お、じゃあやっぱりブイブイEVだね!

追い討ちをかけるようだけど、今度はEVのエネルギー源である電力の観点から見てみるよ。資源エネルギー庁発行の【エネルギー白書2017】によれば、日本の発電エネルギーの供給割合は44%がLNG、40%超が石炭及び石油を合わせた火力発電になっている。つまり、80%以上が化石燃料由来による発電ということになるね。最近では環境問題にも注意する必要があるから、EV化を加速しようにも、発電エネルギー源の脱化石燃料化を進めないことには、EVに電力が供給されないね。

うぅぅさりん。

かぁぁめりん!つまり、EV化の流れが石油消費量に与える影響は、まだ限定的ということだね。

ぐさりん・・・よし、こうなったら“脱EV”だ!

僕は”脱うさりん“したいよ・・・

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(文:横井 )
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