ホーム  > やさしいエネルギー講座

第109回 ~なぜ太陽光発電の「出力制御」が必要? ~の巻(2018年10月31日)

この間の北海道地震で停電が発生したときは大慌てだったよ。これからは僕も、太陽光で自家発電して、蓄電して、何なら余った電気を売って儲けるぞー!

ちょ、待ってよ。何回言わせるの、うさりん。非常時に蓄電は有効かもしれないけど、売電についてはなかなか難しい状況になりつつあるのよ。

え、何で?

先日、九州では太陽光発電量が溢れそうになって、九州電力が発電事業者とつながる送電線の一部を切り離したのよ。全国初の大規模な「出力制御」を実施したの。

あれ、これからは再生エネルギーによる発電の時代じゃないのかい?

基本的にはそうなんだけど、先日の九州は晴天で太陽光発電容量が増加したのに対し、気温の低下で需要は減少し、需給バランスが崩れたの。九州地方の電力需給は、太陽光発電によって昼間最大で需要全体の約7割を賄うことができるタイミングもあって、電気が余る時期も出てきたということね。

へぇ、太陽光発電が既に余るほど供給されていたなんて印象はなかったよ。むしろ、再生可能エネルギーによる発電量は全然足りないと思っていた。

そうね。ちなみに発電所で電気が余ったときには、発電量を調整するための【優先給電ルール】というものがあるのよ。

優先給電ルール?

電力需給バランスを取るために、出力制御の順番があるのよ。その順番は、①火力→②揚水→③大型バイオマス→④太陽光・風力→⑤原子力・水力・地熱となっている。

なるほど、発電の優先順位があるんだ。

そう、最初は火力発電を抑制したり、揚水発電所で水を汲み上げて電力需要を作り出し、太陽光発電を有効に活用する。揚水発電所は、昼間汲み上げた水を使って、太陽光発電が使えない夜間や朝方などに発電するの。次に、他地域への送電という方法もある。

そっか、その手があるじゃん!

でも、ご存知の通り、関東と関西では周波数が違って変電設備の容量に限界もあるし、地域間連系線を作るためにかかる費用は数百億~1千億円規模ともいわれ、費用対効果をよく考えないといけないのよ。

送電網の整備も一筋縄ではいかないんだね。

そして、3番目がバイオマス発電の抑制、4番目が太陽光・風力発電の一時停止、最後に原子力・水力・地熱発電の抑制と続くよ。

脱原発といわれているのに、なぜ原子力は最後なんだい?

原子力を含む「長期固定電源」は、発電時に二酸化炭素(CO2)を出さないゼロエミッション電源である一方、出力調整が技術的に難しいため、一度出力を下げてしまうとすぐに元に戻すことはできないの。原子力の出力を落として、結局、電力が不足してしまった場合、すぐに稼働できる火力発電をたき増すことになり、コストとCO2排出量の両面からマイナスになってしまう。

ふむふむ、大体内容は理解したよ。でもさ、太陽光発電事業者からしたら、出力制御なんて、せっかくの儲かるチャンスを潰されて、不平は出ないのかな?

それも「360時間ルール」というものが、再エネの固定価格買取り制度(FIT)制定当時から定められているよ。

360時間ルール?

太陽光や風力の発電事業者は年間360時間を上限として、無補償で出力制御に応じてもらうというルールに同意しているのよ。再エネ発電率は低いと思いきや、一部の地域ではすでに太陽光発電が供給過多になり、既に出力制御が必要になってきているということね。

大変勉強になりました!

【お知らせ】
このコーナーに対するご意見、ご質問は、下記まで
電話  03-3552-2411
メール info@rim-intelligence.co.jp

(文:横井 )
クイズに挑戦してみよう!
今回の
「やさしいエネルギー講座」から出題!

10月に国内で初めて太陽光発電の一時稼働停止要請が出された地域は?

正解と思ったボタンを押してみよう。

エネルギーの知識をさらに深めたい人は、一般社団法人日本エネルギープランナー協会の検定に挑戦してみよう!

https://www.energy-planner.jp

(リム情報開発は、一般社団法人日本エネルギープランナー協会を応援しています)