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第116回 ~ジオエンジニアリングで地球が冷える? ~の巻(2019年2月20日)

ガタガタ・・・ブルブル・・・・。

うさりん、そんなに震えてどうしたの。

暖房の使用を止めているんだ。灯油ストーブを使いたいのはやまやまだけど、化石燃料を燃やすと二酸化炭素(CO2)を排出して、ひいては地球温暖化につながるって聞いたから・・・。

確かに化石燃料の燃焼で生じるCO2が温暖化の主因とされているけど、脱化石燃料だけが温暖化対策ではないのよ。たとえば「ジオエンジニアリング」という方法が考案されているわ。

また難しそうな言葉。気候工学とでも訳すのかな。

まだまだ研究段階だけどね。ジオエンジニアリングの中でも特に「太陽放射管理」という手法に注目が集まっているの。成層圏に二酸化硫黄(SO2)を注入して、地球に届く太陽熱を跳ね返す。フィリピンのピナツボ火山って聞いたことある?

1991年の大噴火が有名だね。大勢の方が亡くなり、フィリピン経済にも大打撃を与えた。未曾有の大災害と記憶してるよ。

あの大噴火の時は、火山灰と一緒に2,000万トンのSO2が大気中に放出された。この結果、成層圏にSO2粒子が広がり、太陽の熱を遮って、一時的に地球の気温は0.5度下がったんだって。

太陽放射管理では、それを人工的にやろうっていうの?

その通り。飛行機で空中に直接散布したり、地上から蒸気として送り込んだり、SO2の注入方法はいくつかあるみたい。注入にかかる年間費用は10億~100億ドルとの試算もあるそうよ。

そんなに!・・・とは思うけど、抜本的な温暖化対策としては、むしろ安価な部類に入るのかな。SO2を注入するだけっていうのは、即効性もありそうだし。

そうね。実行すれば地球の気温が、18世紀の産業革命前の水準まで下がる可能性があるんだって。これをCO2削減だけで達成するには、さらに費用と時間がかかるかもしれない。

でも、成層圏に注入なんて、地球規模で何か副作用が出る恐れもあるのでは。いいこと尽くめとは思えないよ。

今は構想段階だから、どんなリスクがあるのかハッキリしないの。食糧生産に影響が出るかもしれないし、まったく新しい問題が起きるかもしれない。

空には仕切りがないから、自分たちが太陽放射管理を行わなくても、近くの人や国が実行した場合、全世界に影響が及ぶ可能性もあるよね。

そうだね。だから実用化には、制度設計も含めて相当な時間がかかると思う。それでも温暖化対策は脱化石燃料以外にも、研究中の技術がいろいろあるのを覚えておいてね。

第87回で紹介したCO2の回収・貯留(CCS)とかね。ぼくは脱化石に拘りすぎたみたい。無理は止めて灯油ストーブ焚こっと~。

冒頭の殊勝な心がけはいったいどこへ・・・。

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(文:西江 )
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