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第120回 ~船舶燃料の硫黄規制強化で物価が上昇?! ~の巻(2019年4月17日)

うさりん、2020年から世界を航行する船の燃料に含まれる硫黄分の規制が強化されるって知っていた?

もちろん知っているさ。国際海事機関(IMO)が船舶燃料に含んでもよい硫黄分の上限を、従来の3.5%以下から0.5以下まで下げたんだよね。

さすが、うさりん!日本でも2020年に向けて対応が進んでいるんだけど、それによって物価が上昇する可能性があるって聞いたわ。

なんだって?!それは初耳だ!どういうこと?

これまで3%硫黄分を含んでいたC重油を使っていた船は、規制に適合した燃料に切り替えなければいけないんだ。

それは当然そうなるよね。

適合油って呼ばれているんだけど、それは軽油に近い成分になる可能性があると言われているの。価格はまだわかっていないんだけど、C重油よりも割高な軽油に近くなるらしいのよ。

そうか!そうすると、船の燃料費がこれまでよりも上がって、海運の物流コストが上昇し、物価全体を押し上げる可能性があるということか!

その通り!察しがいいわね!でもそれだけじゃないの。海運だけではなく、トラックなどの陸運にとってもコストアップにつながる可能性が指摘されているのよ。

トラック?硫黄規制の対象は船舶用燃料だけだから、陸運には関係ないんじゃないの?

船舶燃料の硫黄規制によって、トラックの燃料として使われる軽油の価格が上昇するかもしれないのよ。

どういうこと?

船舶の適合油は軽油に近い成分になる可能性があるってさっき言ったわよね。C重油から適合油に燃料の切り替えが進むと、世界中でそれだけ軽油の需要が増えることになるの。

なるほど!そうなると、軽油の需給が引き締まって、陸運向けの燃料価格が上昇し、物価全体の押し上げにつながるのか。

そうなの。ただ、軽油価格は上がらないとの見方もあるわ。

需要が上がれば、当然値上がりしそうな気がするけど?

国土交通省の試算では、日本の船舶向け軽油使用量は2015年度で軽油全体の1.2%しかないの。仮に需要が増えても影響は軽微との指摘もあるわ。また、日本の石油元売りは軽油が余っているから、海外に多く輸出しているの。輸出している軽油を船舶用に回せば、需要増加分を十分に吸収できるとされているのよ。

そうか。それなら大丈夫な気もするな。でも、世界中の軽油価格が上がったら、石油元売りはわざわざ国内で安く売る必要はないよね。

そう。海外の軽油価格が高ければ、それに合わせて石油元売りは国内の軽油価格を引き上げる可能性は十分にあるわ。

規制が開始されたら、海外との軽油価格の差が注目されそうだね!

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(文:須藤 )
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