第127回 ~石炭を液体に ~の巻(2019年7月31日)
うさりん、石炭といえばどんなイメージを持っている?
黒い塊っていうくらいしか思い浮かばないな!
なるほど。最初は私もそうだった。ところで、石炭を透明に変える技術を、あるドイツ人が1913年に発見したことは知っているかな?
エ~~100年近くも前のことなんか知らないよ。あんなに黒い石炭を透明に変える技術がそのころからあったんだ!
そうなのよ。驚いたわ。第二次世界大戦中、石油が不足したドイツでは、ナチスがその技術を使って大量に『液化油』と呼ばれる合成燃料を生産し、戦車や飛行機などの燃料に使用したのよ。
最新技術の裏にはそんな悲しいことがあったんだね。でも、そんなに前から進んだ技術があるのに、なぜ量産化されなかったの?
ナチスドイツは、戦争に勝つために国家を挙げて『液化油』を量産化することができたけれど、現代社会では生産コストを無視することはできないのよ。戦後、中東やアフリカなどで相次いで油田が発見され、安い価格で原油を買うことができるようになったでしょ。だから、わざわざコストをかけて石炭を液体にする必要がなくなったのね。
やはり、問題はコストなのか! でも、いま中東の政情が不安定になり、原油価格も日々大きく変わっているよね。ということは、再びこの『液化油』が注目されるかもしれないね。
確かに中東情勢は緊迫しているけれど、石炭と液体化技術さえあれば、すぐに量産化できるわけではないし、なかなか難しいことね。
そうか~簡単じゃないんだね。
私は以前、外国のテレビで、「石炭液化油」をテーマに取り上げた番組を見たことがあるけれど、この次世代エネルギーと言われる『液化油』の問題点について取り上げていたわ。
いったい、どんな問題点があるんだい?
例えば二酸化炭素の排出問題ね。石炭を液体化するのにエネルギーを使うので、その過程たくさんの二酸化炭素が排出されるのよ。これが『液体油』が普及してない一つの理由と指摘する人もいるわ。でも、現在の原油の可採年数が58年であるのに対し、石炭は110年と遥かに長いわ。もし将来、原油が枯渇することになったら、石炭由来の『液化油』が注目されることになるかもしれないわね。
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(文:方 友明 )
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