ホーム  > やさしいエネルギー講座

第130回 ~米国産原油増加で日本のエネルギー調達が安定? ~の巻(2019年9月11日)

ねえ、かめりん。このところ、ガソリンスタンドのガソリン価格が下がってきたね。

ああ、そうね。今のガソリン価格の全国平均はリットルあたり143円ぐらいだね。昨年の今ごろは153円だったから、10円下がったことになるね。

ガソリン価格って、ころころ変わるよね。価格が下がった理由は何?

それは、原油価格が下がったからだよ。

じゃあ、原油価格が下がった理由は?

一口には言えないんだけど、主に米中貿易摩擦などによる世界経済の減速懸念と、米国の原油の輸出量が増加していることかな。

米国って、石油の消費量が一番多い国でしょ。それなのに原油を輸出しているの?

そうだよ。今や米国は、原油輸入国から輸出国に転じているんだよ。

ええっ!そうなの!

そう。生産量が急激に増加して、国内の消費分を大きく上回ったからなのよ。米国の生産量はここ7年間で2倍の日量1,200万バレル以上。今や世界一なのよ。これは、シェールオイルの生産技術が向上したためなのよ。(第8回 ~シェールガスって何?の巻~2013年2月1日を参照)

じゃあ、ヨーロッパとか米国に近い国は、米国で余った原油を安く買うことができるようになったんだね。

ヨーロッパだけじゃないよ。日本だって米国の原油を輸入しているんだよ。

えっ!日本も?

そう、3年前に初めてコスモ石油が輸入して、今では大半の元売りが米国産の原油を精製しているんだ。

でも、米国から日本って、かなり遠いよね。

そうよ。しかも、米国といっても西海岸ではなくて、多くの原油はメキシコ湾で船積みされるの。そして南米大陸を回って日本にやってくるのよ。逆に言えば、高い輸送費をかけても、日本に到着した時点では米国産の原油が中東産よりも安い場合が少なくないんだ。

そうだったんだ。じゃあ、米国産の輸入量は大きく伸びているんだね。

それでも中東産の輸入量と比べれば、米国産はまだ3%ぐらいだから、相当少ないね。でも、ここ3年でどんどん増えているんだ。

米国産の原油輸入が増えている理由は、やっぱり価格が安いから?

うん。ただ、価格の面だけとも言えないよ。中東地域は紛争や武力衝突が多いから、中東産原油は急に供給が途絶えるリスクと常に隣り合わせなの。

確かに、この間もホルムズ海峡でタンカーが攻撃されたってニュースがあったね。

そう。輸入依存率がほぼ100%の日本にとっては、原油調達の安定性は大事なことなの。だから、より安定的に供給できる米国産原油の存在は大きいわ。

ふーん。

また、日本は中東産原油に対する依存度が高いから、中東の産油国との価格交渉の面では、日本は常に不利な状況にあるとも言えるわね。たとえ中東産原油の価格が高くとも、買わなくちゃいけない状態にあるから。

なるほど。つまり、日本が米国から原油を輸入できる状態になれば、中東産原油をより安く買うための交渉材料にも使えるってことなんだね。

そのとおり。原油の調達先が多様化すれば、エネルギーを安定的に確保できるうえ、コストを引き下げることにもつながるのよ。

ふーん。米国産原油が輸入できるようになったことは、いろいろな意味で日本に恩恵があるんだね。

【お知らせ】
このコーナーに対するご意見、ご質問は、下記まで
電話  03-3552-2411
メール info@rim-intelligence.co.jp

(文:橋本 )
クイズに挑戦してみよう!
今回の
「やさしいエネルギー講座」から出題!

現在、世界最大の原油生産国は?

正解と思ったボタンを押してみよう。

エネルギーの知識をさらに深めたい人は、一般社団法人日本エネルギープランナー協会の検定に挑戦してみよう!

https://www.energy-planner.jp

(リム情報開発は、一般社団法人日本エネルギープランナー協会を応援しています)