記者の眼記者の眼

第244回 (2024年5月8日)

 「みどりのおばさん」をご存じだろうか。還暦を過ぎた筆者の年代には、なじみのある思い出深い言葉だ。交通量の激しい道路や見通しの悪い交差点などで、小学生の安全な道路の横断を見守り指導する方々の総称だ。今では「交通整理員」と呼ばれていて、おもに学区の保護者によって輪番で行われているようだ。

 

 昭和30年代ごろ、全国で交通事故が多発していた。事故防止と児童の安全確保を目的に、東京都などの自治体の職員が緑色の制服を着用して交通指導を始めたことが語源になっているそうだ。「学童擁護員制度」と呼ばれたこの取り組みはすでに終わっていて、地域のボランティアに委ねられている。もちろん、現在では服装は自由なようだが、雨の日も風の日も見守りとなると、そのご苦労は大変なものだろうと推察する。何よりも、危険と隣り合わせだし、その責任も重大だからだ。

 

 この交通整理員の仕事が人気だと言う。にわかには信じ難いことだが、定年退職したシニア層などが積極的に手を挙げているそうだ。筆者の自宅付近の通学路で、30年近くこの業務をしているご婦人がいる。月曜から金曜日まで開校時期の「朝の40分」だけとは言え、長きにわたってこの地域の学童の安全を見守ってきてくれてきたことに感謝をしたい。

 

 考えてみると、定年後は意外と社会との接点は少ないのかもしれない。日常の何気ない風景の中に、シニア層の奉仕の心遣いが息づいているのを見てさわやかな気分になった。

 

( 山田 )

 

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