マレーシア政府は2022年に入り、陸上輸送燃料として、パーム油の混合比率が20%のバイオディーゼル「B20」を今年中に導入すると発表した。当初は20年1月の導入を計画していたが、新型コロナの感染拡大による燃料需要の変動や経済活動の制限などを背景に延期していた。政府はさらに、25年までに「B30」(パーム油の混合比率が30%のバイオディーゼル)を普及させる計画だ。
しかし、マレーシアの市場関係者間では、「B20」や「B30」の普及は容易でないとの見方も多い。理由の1つにマレーシアのパーム油の価格や需給が不安定なことが挙げられる。同国パーム油庁の統計によると、21年1~11月のパーム油生産は前年の同じ時期に比べ6.4%減の1,667万トンとなったもよう。新型コロナによる出入国規制で外国人労働者が十分確保できなかった影響が大きい。
一方、アジアのパーム油需要は堅調。有力輸入国のインドはパーム油の21年1~10月の消費が前年同期比42%増の280万トンとなった。結果として、パーム油の価格(CPO)は21年1~11月の月間平均がトン当たり4,363マレーシアリンギッドと、前年の同じ時期より66%上昇したもよう。パーム油の生産や在庫の安定性や、パーム油取引価格の変動による国庫負担(補助金額)などが今後の「B20」、「B30」の導入や普及を左右しそうだ。
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