ナイジェリア=増加する盗油行為-国営NNPCに続き、シェルも被害
ナイジェリアでは近年、原油の盗難事件が頻発している。政府は警察のほか、軍隊まで動員して鎮圧に乗り出すものの、被害件数は増加の一途を辿る。打つ手なしで、対応に苦慮しているようだ。
サイト『ビジネス・レポート』(9月10日付)などによると、英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルのナイジェリア法人「シェル・ペトロリアム・ディベロップメント・カンパニー」(SPDC)は、2018年にニジェールデルタのパイプラインで日量1万1,000バレル相当の原油が盗難被害にあった。17年は同9,000バレルだったとし、盗油行為は年々、エスカレートするばかりだ。
8月26日には、ナイジェリア国営石油会社(NNPC)が、2019年6月のパイプラインへの破壊工作は5月の60カ所から106カ所に増えたと発表した。また、エド州のオバセキ知事は、今年1~6月に盗まれた原油が計2,200万バレルに上ったことを明らかにした。
そのほか、アマエク前運輸相は7月末、船舶への違法な給油でナイジェリアは年間250億ドルの被害を被っていると指摘。その上で、違法な石油取引に加え、それを取り締まるためのコストがなければ、ナイジェリアの経済は容易に改善できると強調した。
原油価格が下落傾向にある中、NNPCは2019年6月の石油・天然ガス生産における収益が約3,200億ドルにとどまったと発表した。NNPCの新社長に就任したクヤリ氏は今夏、事業方針を表明し、原油生産量を日量300万バレルにするとした。このほか、既設製油所の改修工事を進めると同時に、ダンゴート・グループが計画する新設製油所プロジェクトを支援することで、2023年までに石油製品の純輸出国になるとの目標を掲げた。
目標を達成するためには、プロジェクトの遂行に加え、違法な石油取引や盗油事件の取り締まりを強化するしかないが、こうした蛮行が窃盗団の単独犯行でなく、組織および国家ぐるみの犯行との指摘もある。
ところで、リム情報開発は8月末、TICAD7の展示会場でナイジェリア政府の関係者に、頻発する原油窃盗事件について取材した。この担当者は「警察だけでなく、陸軍が(窃盗団の)鎮圧に乗り出した。それほど心配する事態になっていない」と回答したものの、この発言を額面どおりに受け取るエネルギー産業関係者は少ないようだ。