新春特集=2023年の海外LPG市場、スポット取引が活発化
2023年の海外LPG市場は2022年の流れを引き継ぎ、インドなど新興国の需要増からスポット取引が一段と活発化しそうだ。供給面では北米から極東向けLPG輸出の拡大が続く見通し。インドのヒンダスタン石油(HPCL)は2023年ターム調達量をプロパンとブタン各2万2,500トンを45カーゴに加え、1万トンを24カーゴと、2022年比で大幅に増やした。
また、インド向けターム供給契約を保有するプレーヤーは2022年比で2023年にスポット市場での購入量を増やすとの見方が寄せられた。これらのプレーヤーは中東産ガス社とのFOBベースのターム供給契約で十分な数量を確保できなかったもよう。中国ではプロパン脱水素(PDH)装置の稼働状況がプロパンの需要動向のカギを握る。2023年に中国では新規PDH装置の立ち上げが複数予定されている。1~3月に華南、華東、華北の各地域で新規PDH1基が稼働開始する予定だ。これに加え、新規の小規模PDH始動や既存PDHの生産能力増強も相次いで計画されているようだ。
しかし、懸念材料もある。プロピレン市況の相場低迷や石化需要の減退が発生した場合、PDHは採算が悪化し、稼働率の引き下げを余儀なくされるからだ。実際、2022年に複数のPDHが収益悪化に直面し、減産や稼働停止を強いられた。このため、中国の2023年LPG輸入量は2022年と同水準にとどまる可能性があるとの観測が寄せられた。
中東産ガス社の2023年LPG生産は2022年11月以降の水準を維持する見通し。石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」は、2022年11月に原油の生産量を日量200万バレル縮小で合意した。これにより中東産ガス社のLPG供給量は減少している。いずれにせよ2023年も中東産油国の原油生産動向が中東産LPG供給量の決定要因になりそうだ。
23年の米国産LPG輸出量は前年比約5%増の5,600万トンに拡大すると予測されている。ただ、中東産LPGの生産動向やパナマ運河の混雑状況によって、米国産LPGの輸出量は上振れしたり、下振れしたりすると市場関係者はみている。
一方、国内に目を向ければ、元売り各社による価格転嫁が一段と進展する年になる。国内市場は元売り各社がコスト増加分の価格転嫁を計画している。パナマ運河の通峡コストや滞船コストの増大が元売り各社の収益を圧迫しているためだ。元売り各社は2023年2月もしくは4月から仕切り価格への転嫁を予定している。パナマ運河の通峡費用は23~25年に段階的に引き上げられるため、元売り各社は米国産LPGの調達経費を2023年にトン当たり4ドル、2024年と2025年に各3ドル引き上げる予定。加えて、パナマ運河の通峡予約の変更に伴い滞船が長期化しており、その分のコスト負担も増大している。