新春特集=2023年のアジア石油製品、ロシア・中東・中国の動きに注視
【ガソリン】2022年のガソリン市況は品質によって二極化した。
オキシー品は、アジア最大輸入国であるインドネシアを中心とした東南アジアで、内需が振るわず輸入が低迷した。経済不況や原油高に伴う国内価格の高騰が背景にあった。インドネシアではターム品で需要を賄えており、スポットの買いは長らく出なかった。一方、中国は輸出を増やした。割安なロシア産原油の輸入を増やし精製コストを抑え、輸出割当量も充分だった。このためアジア域内で需給が緩み、10月ころにはドバイ原油に対するガソリンのクラックマージンはマイナス圏となった。
ノンオキシー品は、クラックマージンが縮小しているなか、韓国などの石油会社が輸出を抑えたため、供給が引き締まった。一方、域外向けの需要が増加した。西アフリカでガソリンのスペックが見直されたことから、同地域向けにブレンディング用として調達する動きが目に付いた。台湾のフォルモサ石油化工(FPCC)は、23年分として93RONガソリン(0.005%S)のターム販売契約を締結。価格はFOBベースでシンガポール市況(92RON)に対し4.00ドルを超えるプレミアムだった。
2023年の市況は、オキシー品、ノンオキシー品ともに22年の動向が当面は続く見通しだ。
注:オキシー品(含酸素ガソリン)、燃料の酸素含有量を増加させる添加剤としてエタノールなどを含む燃料の一種。酸素含有量を増加させる添加剤として使用する化合物は「含酸素化合物」で、これらのコンポーネントをガソリンに追加する主な理由は、オクタン価を上げる安価な方法である。
ノンオキシー品(無酸素ガソリン)、燃料の酸素含有量を増加させる添加剤を含まないガソリンの一種。この燃料には、エタノールやその他の酸素化物は含まれていない。
【ナフサ】2022年のナフサ市況は、年後半にかけて低迷した。原油高と石化市況の大幅悪化が背景にある。石化向けライトナフサのプレミアムも消失した。ドバイ原油に対するクラックマージンは、3月中旬までプラス圏だったものの、その後マイナス圏に転じ、6月中旬に一時マイナス30ドル台を記録した。一方、コンデンセート代替のスプリッター向けヘビーフルレンジナフサの需要は比較的堅調だった。
2023年は、世界的な景気後退懸念から石化市況不振の継続が見込まれ、ナフサクラッカーの減産や定修延長で需要低迷が続くとの見方が聞かれる。年後半に景気や石化市況が上向くとの見方もあるが、その際は製油所稼働が上昇し、供給増からナフサ市況の上値は重いとみる向きもある。
【ジェット・灯油】2022年のジェット燃料は需給の引き締まりが続いた。ロシアのウクライナ侵攻に伴う供給懸念があった一方、新型コロナからの経済回復に伴い、特に欧州や米国などで航空向け需要が増加。アジアからこれらの地域に向けた、引き合いの増加が相場を下支えした。ドバイ原油に対するクラックマージンも6月には61ドルをマークした。
2023年以降もジェット燃料を含む中間留分は、引き続き堅調となる見通しだ。新型コロナの感染抑止を目的とした行動制限は、アジアでも落ち着きつつある。このため、今後は域内の需要も増加する見通しだ。一方、供給面では中国および中東積み品の増加が意識されている。
【軽油】軽油は2022年、需給の逼迫感が強まった。ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、欧米各国はロシアへの経済制裁を強化。需要家や石油会社はロシア品の引き取り量を減らし、中東やインド、北東アジア積み品の引き取り量を増やした。このようななかで中国も6月まで自国の供給を優先しようと輸出を抑えたため、ドバイ原油に対するクラックマージンは、6月に歴史的な高値となる71ドルとなった。7月以降は中国の輸出再開によりクラックは天井を打ったが、他の油種と比較して高い水準となっている。
2023年以降も堅調な地合いは継続する見通し。同年2月より、欧州勢はロシアの石油製品を禁輸する方針を示しており、ロシア品の代替としてアジア品への引き合いがさらに強まることもありそうだ。ただ、中国石油天然気(ペトロチャイナ)は新設した製油所の試運転を22年秋より実施。また、クウェートのアルズール製油所では23年以降、。同製油所は日量で少なくとも80万バレルの処理能力を有する見通し。中国や中東積みの販売が増加し、これが相場の下げ要因として寄与する可能性もある。
【重油】2022年の重油市況は軟調な地合いが続いた。需要不振が続くなかで、主にロシア産重油がシンガポールなどアジア向けにまとまって流入し、供給過剰となったことが要因。ドバイ原油に対するクラックは年初から6月にかけて拡大したのち、年後半には0.5%S重油が1けた台のプラス水準まで縮小。180cstおよび380cst重油はマイナス圏で同様のトレンドを描くなど低調に推移した。
2023年の市況もロシア品の動向に負うところが大きそうだ。一方、クウェートのアルズール製油所が2022年11月から順次稼働しており、だといわれている。アジアの低硫黄重油市況にとって、重石となりそうだ。