新春特集=一般炭価格、2023年も歴史的な高値継続の可能性大
2022年の発電用石炭(一般炭)の豪ニューキャッスル積み価格は160ドル台でスタート。一年を振り返れば結果的にこれが最安値で、2月のロシアによるウクライナ侵攻を契機に相場は一気に跳ね上がった。3月3日には上期最高値となる446.00ドルを記録した。その後、やや落ち着きを取り戻し、一時は250ドル近辺まで下落したものの、4月以降は再び上げ基調を強めた。北半球の夏場となる7~9月には400ドルを超える日も多く、9月6日に463.75ドルを付けた。
歴史的高値を維持した背景には、世界的な需給引き締まりがある。原油や液化天然ガス価格の高騰が続くなか、中国やインドといった国々では発電用石炭の需要が急増。日本でも原子力発電所の使用が限られており、石炭使用量は増加した。一方、脱炭素の流れが強まるなかで、資源大手や商社などは石炭の権益を売却。各国の金融機関も融資の停止や引き上げの動きを強めており、供給は減少している。
スポット取引での極度の品薄感はターム契約にも影響を及ぼした。資源メジャーのグレンコアと東北電力が10月に結んだ22年10月~23年9月分の豪州産一般炭のターム価格はトンあたり395ドルと、過去最高。両社の契約価格はアジア域内の需要家が売り手と交渉する際の指標になるとされており、市場関係者の関心を集めた。日本に持ち込まれる発電用の一般炭価格も過去最高値を更新した。財務省貿易統計によると、トンあたりのCIF価格は1月の2万875円から、10月には5万6,792円と2.7倍となった。
2023年は引き続き世界的に石炭価格が高止まりする公算が大きい。ただし、相場に大きな影響を及ぼしかねない変動要因も散見される。ロシアのウクライナ侵攻はいまのところ先行きの情勢が不透明。情勢次第で石炭価格がさらに押し上げられると見る関係者がいる一方、事態が収束し、ロシア産炭の供給が増加することになれば市場が落ち着きを取り戻す可能性もある。さらに世界最大の石炭需要国である中国で新型コロナウイルスの感染が落ち着き、経済活動が本格的に再開すれば、石炭需要を大きく押し上げると見られている。
ここ数年、地球温暖化の観点から、二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭には厳しい目が注がれているものの、インドや中国、さらにロシア産天然ガスの受け取りが困難になっている欧州でも、発電用燃料として石炭を利用せざるを得ない局面を迎えている。23年に石炭需要が大きく落ち込む可能性は大きくないようだ。