新春特集=2023年のアンモニア、引き続き高値圏で推移
【政府動向】政府は水素、アンモニアについて、2030年にそれぞれ300万トンの燃料需要を想定しており、足元では実現に向けて定義付け、コスト支援などについて審議会で討議している。また、2023年は日本が先進国首脳会議の議長国となっており、5月19~21日にはG7広島サミットが予定されている。これに先立つ4月には札幌でG7気候・エネルギー環境大臣会合が開かれるが、同会合に向けて脱炭素分野で日本発の施策が打ち出されるとの見方が出ている。
【水素】2023年の水素ステーション建設はペースが鈍化するとの見通しが聞かれる。日本水素ステーションネットワーク合同会社が公表する水素ステーション整備計画によると、2020年の24件以降、2021年は7件、2022年は5件と減少している。一部を除いて県庁所在地など主要都市への新設が終わっているため、2023年の開設も前年並みの1ケタにとどまるというのが大方の見方だ。
水素燃料電池車の活用事例として、トラックなど物流への応用が期待されている。配送業者にとっては電動バッテリーより、水素の方が積載上、軽量で済むという利点がある。ただ、一台あたりのコストが高く、なかなか民間ベースでの導入が進まないという難点もある。
仏エア・リキードが2022年9月、伊藤忠商事、伊藤忠エネクスと福島県本宮市に、日本で初となる24時間・年中無休の大型の水素ステーションを開設すると発表。伊藤忠グループが水素分野に乗り出すという点からも注目された。従来のステーションでは供給量の問題から営業日や時間帯が限られていたが、今回は、乗用車やバスだけでなく、今後の増加が見込まれる小型・大型トラックなど商用車の需要に対応。開業は2024年前半を予定している。これに続く大型ステーションの設置が期待されている。
モビリティ以外にも電力、鉄鋼など水素エネルギーの利活用を検討している企業は多いが、政府による初期投資への補助やグリーン水素として定義付けの明確化が待たれている。
【アンモニア】アンモニアの取引価格は、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油価格や天然ガスの高騰を受けて世界的に値上がりした。CFRタンパは3月下旬に1,625ドルと、1年前(同445ドル)から3倍以上に急騰。国際的な取引価格の指標である黒海出しの出荷が、侵攻により停止したことも影響している。目先、侵攻の終結が見えないなか、2023年も高値維持が続くと予想されている。
日本国内ではJERAが2022年5月18日、燃料アンモニア調達のための国際競争入札を実施し、提案依頼書を約30社に送付した。入札条件はFOB、期間は2027年度から2040年までで、年間最大50万トン。アンモニア製造時に二酸化炭素を発生しない、もしくは回収・貯留されていること、JERAに製造プロジェクトの参画機会があることも挙げられている。入札結果は2022年末現在でまだ公表されていないが、JERAが実際に現地に赴きプロジェクトの状況を視察するなど入念に時間をかけており、すぐに結論は出にくいようだ。