新春特集=2023年の国内石油製品、東日本は輸入と製油所再編が関心事
2023年の国内市場はどうか。元売りや商社、卸業者、さらに小売業者などから寄せられた市況観や業界動向について、各地区で関心の高い話題をまとめた。東日本は需要期の灯油や動き出した業界再編、西日本は輸入ガソリンなど、関心事は地区の特性が色濃く出ている。
北海道地区
灯油の供給余力が焦点に
北海道の陸上スポット市場は需要期に入った灯油の供給余力が今冬の焦点となる。これまで有力な供給ソースの一角を占めてきた輸入玉の供給が海外市況の高止まりで国内への流通が期待しにくい状況にあるからだ。貿易統計によると、道内の1~3月灯油輸入は2022年が39万308kl、21年が35万2,080kl。海外市況高が続く限り、2023年はこれらの数量を下回る可能性が高い。物価高を背景とする一般消費者の節約ムードなど不確定要素はあるものの、製油所の精製能力が決まっている以上、仮に灯油需要が平年並み以上で推移すれば、輸入の減少分が需給の締まりに直結することになる。
また、気象庁の直近3カ月予報によると、年明け1月以降の気温は平年並み、もしくは平年以下となりそうだ。寒波による需給タイト化への懸念は市場関係者間で根強く、現在の市場環境が続く限り道内灯油市況は引き続き東名阪4製油所を上回る水準で推移する可能性がある。北海道の灯油輸入実績は以下のとおり。
東北地区
ガソリンスポット玉は存在感が増す
2017年4月以降、旧JXエネルギーと旧東燃ゼネラル石油の経営統合を皮切りに、製油所や油槽所の統廃合が進み、早や5年が経過。ガソリンスポット市場の構図も大きく変わった。とくに首都圏では異業種PB店の筆頭であった「ジョイフル本田」は出光興産の特約店が運営を担っており、実質系列化された。また、東名阪では独立有力PB店からキグナス石油やコスモ石油マーケティング系列店へ鞍替えする流れも浮上している。実際、首都圏、中京(愛知、三重、岐阜)、阪神(京都、大阪、兵庫、和歌山)では2022年12月時点で独立系PB店の占有率が首都圏6.3%、中京9.6%、阪神9.4%と、すでに10%を割っている。
一方、東北地区は依然として12.4%と高く、スポットガソリンの調達に依存するSSが多いようだ。宮城県を除く他県は10%を超えており、とくに青森県は18.1%を占めるなど、業者間でのスポットガソリン取引が他地区と比べ多い傾向にある(下記表参照)。
昨年7~8月は輸入玉が国内市況と比べて割高で推移し、実質的に流通が途絶えた。輸入ガソリンの流通量が多い中京や阪神では市況が東北より割高に推移するというこれまでにない動きがみられた。とくに東北では地元の卸業者から流通するスポット玉の影響度が大きく、東名阪の販売も兼ねている広域ディーラーはこれらを割安な価格で調達し、転売する動きが目立った。実際に8月のガソリン月間平均値は仙台がリットルあたり130.18円に対し、千葉、川崎、中京、阪神の製油所出しは同131.82円と、価格競争が激しい東名阪に比べ、仙台は1円以上下回った。
また、青森や八戸地区のJONET油槽所は実質的に2021年度から出光興産の傘下となり、これまで同油槽所で在庫ビジネスを展開してきた大手商社が撤退する一方、隣接する東西オイルターミナルの油槽所を拠点にキグナス石油やコスモ石油マーケティング玉を取り扱う広域ディーラーが新たな市場を開拓し、業者間の競争が強まっている。主役の入れ替わりが進んだ格好だ。
東北地区は独立系PB店の占有率が高く、スポットガソリンの需要が相対的に多い。2023年度は政府が支給する燃料油補助金は1~5月にかけて減額が決まった。輸入業者の商社や大手タンク業者は補助金の恩恵にあずかる場面が減る可能性もある。こうした環境下で今年も昨年同様、輸入玉の流入が国内市場で細った場合、東北地区のガソリンは東名阪の都市部より取引相場が安値で推移するかもしれない。
京浜地区
製油所統廃合が再燃、既存燃料と次世代エネルギーが点から線に
2023年は経済の回復がどの程度進むかが焦点となりそうだ。新型コロナの感染が拡がって3年が経過した。ワクチン接種や感染予防対策の浸透で自粛ムードは大幅に緩和されているものの、ガソリンや灯油の販売量はコロナ前には戻らない。直近では食料品の値上げが相次いだため、消費者の財布の紐は締まったままだ。インバウンドや旅行割で首都圏へ人の往来は増えているものの、「大通りの交通量が少ない」、「夜間の人の動きがなくなった」などの声が方々から聞こえており、新しい生活スタイルが定着したとみられる。
また、2022年はこれまで落ち着いていた京浜地区の製油所統廃合が再燃した年でもあった。ENEOSは根岸製油所でトッパー1基を廃止し、出光興産は子会社の東亜石油を完全子会社とした。東亜石油は川崎市臨海地区で京浜製油所を運営している。
千葉側では、11月24日に京葉臨海コンビナートのカーボンニュートラルに向け、推進協議会が設立された。鉄鋼や石油精製、石油化学、電気、ガスの11社を対象に、脱炭素エネルギーやエネルギー最適化など、業種を超えた企業間連携の取組を推進していく。これまでエネルギー関連企業間の脱炭素に向けた連携は神奈川県が全国的にも先行していたが、対岸の千葉県もようやく動き出した。
次世代エネルギーに対して「まだ先のこと」と、点として扱う部分も多かったが、製油所やトッパーの統廃合が再び強まり始めている状況をみると、ガソリンや軽油など既存燃料の需給にもじわじわと影響が広がりそうだ。2023年は既存燃料と次世代燃料の点と点が線になる可能性もある。