新春特集=2023年の国内石油製品、西日本は補助金動向を注視
中京地区
A重油は価格変動に乏しい、「面白味欠ける」の声
防衛装備庁が2022年11月に実施した2~3月納め駐屯地向けLSA重油入札を見ると、愛知・岐阜・北陸3県向けがリットルあたり届け79円台半ば~83円前後で落札された。愛知や四日市の製油所出しEXベースに換算すると、おおむね78~80円に相当する。入札に参加した卸業者は、中京エリアの製油所出し価格は年度末の3月まで75~80円前後で推移するとの見通しを示した。中京地区のA重油市況は、政府による燃料油補助金の支給が開始された2022年1月から11月まで72円台半ば~80円前後と、比較的狭いレンジで推移した(グラフ参照)。補助金の支給で急激な上昇が抑えられる一方、大きく下落することもなかった。
コスモ石油マーケティングが2022年10月から週決め仕切り改定のタイミングを他元売りに合わせてから、市況の変動がさらに抑制される傾向となった。2023年1月以降、補助金支給額の減額が決まったものの、現状と大きな変更はない。市場では「上限80円をみておけば問題ない」(大手卸業者)との指摘が聞かれるなど、3月まで価格変動は乏しいとの見方が強い。このような見方は防衛装備庁の入札参加業者間でおおむね一致した認識のようで、仕入れに対しマージンをどの程度上乗せしたかが当落を分けた。
補助金政策の継続は価格変動が抑制されるため、取引において損失を出すリスクは低い一方、利益を増やすチャンスも乏しいといえる。中京地区の卸業者からは「面白味に欠ける」との声が寄せられている。
阪神地区
輸入ガソリンは外せない
阪神のガソリンスポット市場は輸入採算価格の動向が引き続き焦点となる。採算価格は一時にくらべ上昇してきたとはいえ、2022年12月上旬時点でリットルあたり140円程度。政府の燃料油補助金を差し引いても120円程度と2022年の夏場以降は国内市況対比で競争力を発揮している。
阪神地区は元売り各社の精製玉、バーター玉、転送玉、輸入玉と出荷ルートが他地区より多彩だ。輸入玉の競争力が維持される限り、輸入玉以外の玉も全体的に上値が抑制され、スポット市況は2022年7~8月の東北地区を除き、他地区と比較して安値圏で推移する可能性がある(東日本欄参照)。市場関係者によると、需要期を迎える灯油など中間留分は品薄への警戒感が燻るものの、ガソリンは輸入採算が国内市況に見合う影響で中間留分ほどの高値警戒感はないという。
このほか、2022年は燃料油補助金対象から外れている先物玉の流通が激減したが、製油所玉などと比較するとスポット市場でのシェアは限定的。当面の影響は軽微と目されている。
四国地区
ガソリンは3月まで余剰感継続の可能性
2022年は9月までに製油所の定期修理がピークを迎え、10月以降はガソリンの流通玉が徐々に増えてきた。今年もこの傾向は続きそうだ。輸入ガソリンの流入を受け、3月まで余剰感を見越す市場関係者も少なくない。太陽石油は2023年以降、定期修理を毎年行う必要がある。2023年は6~7月に2基あるトッパーを1基ずつ止め、定修に入ると伝えられている。ただし、期間は約1カ月で終えるスピーティーな計画を立てているようだ。
足元の市況を見ると、ガソリンの輸入採算価格はリットルあたり83円前後、これに補助金が加算されると同70円切れに相当する。 足元の系列価格やスポット価格に対して競争力がある価格に仕上がるため、商社などは輸入しやすい環境と言えよう。
一方、卸業者間では製油所出しガソリンの拡販として、量販小売業者向けに割安で流している形跡もある。「運送費を入れても採算が取れるので、徳島地区の小売業者にも製油所玉が流れているケースもある」 (市場関係者)という。自粛ムードは後退しているものの、生活スタイルの変化もあり、ガソリン需要は戻りが鈍い。石油連盟がまとめた西日本のガソリンは12月17日時点で前年比15.1%増の86万6,835klと、過剰気味だ。
九州地区
補助金の動向に一喜一憂?
とにかく燃料油補助金という声がほとんど。経済産業省は2022年12月21日に1~5月にかけて補助金を段階的に引き下げると発表済み。また、原油や為替の動向に関心を寄せるディーラーも多かった。
輸入玉減で需給がタイトとされるなか、2022年は11~12月がいかに冷え込むかが相場を左右するとみる市場関係者も多かった。財務省貿易統計速報によると、九州および山口エリアの各港に輸入された灯油は2021年1~12月で計16万7,475klだったが、2022年1~10月時点で総計5万668klと、半分にも満たない。需給が逼迫すれば2022年7~8月のガソリンのように、スポット玉が買いたくても買えない状況になる可能性が高い。
油槽所の閉鎖も関心事
複数の市場関係者によると、出光興産の唐津油槽所は2023年3月に廃止となる。同油槽所は東西オイルターミナル佐世保油槽所と福岡に挟まれた立地で「位置が中途半端だった」と地場ディーラーは伝えている。同油槽所はタンク容量が小さいとの指摘もある。今後は全農唐津基地と統合される見込みだ。