特集記事 世界の炭素価格付け、2022年の潮流 その2
排出量取引、制度の半数で価格上昇 ETSでの取引価格は過去1年、エネルギー危機や生活費の高騰などの状況の中で、世界的に上昇傾向をおおむね維持した。 ETSと炭素税の半数の価格が上昇し、約3分の1は固定制のため価格が変化しなかった。残り15%弱のETSと炭素税の価格は下がった。 価格上昇が最大だったのは、欧州連合(EU)とそれに連結する制度であるスイスのETS。2023年3月には、100ユーロ(109米ドル)を超えた。EUとスイスの相場は2022年、乱高下を繰り返した。 一方、ETS価格が下がった国の中では、最大だったのが韓国で35%の下落を示した。
エネルギーの価格高騰を背景にした炭素税率の引き下げや、引き上げ延期といった政治的圧力の影響を受けた国は少数にとどまる。 ドイツは2023年の初め、航空を除く輸送部門とビルを対象とする国内ETSの炭素価格を30ユーロに据え置いた。当初は2023年より5ユーロ引き上げ35ユーロとする予定だったが、エネルギー価格の高騰に対応するため実施を延期した格好。玉突きで、2024年と2025年の引き上げ計画も1年ずつ先送りとなった。 スウェーデンも予定していた引き上げを延期した。 注:EU(欧州連合)、New Zealand(ニュージーランド)、California/Québec(米カリフォルニア州/加ケベック州)、RGGI(米北東部州・地域排出権取引制度)、Republic of Korea(韓国)、China(中国) 縦軸=二酸化炭素1トンあたりの価格、1米ドル 出所: 世界銀行 年次報告書
ETSと炭素税による収入、950億ドル ETSと炭素税による導入国・地域政府の2022年の収入は世界全体で前年比1割増(約100億ドル)の約950億ドルとなり、大幅に増加した2021年をさらに上回った。収入の割合は、ETSが69%、炭素税が31%。 国・地域別では、EUのETSによる歳入が420億ドルと圧倒的に多い。EUの収入増78億ドルが総増加額の76%強を占める。ETSの市場規模そのものが大きいうえに、取引価格の上昇と無償割当枠の削減が収入額を一層増やした。 国民1人当たりの収入額は、スウェーデンの道路輸送に対する炭素税が最も高く、200ドル強に達する。
注:ブルー=ETS(排出量取引)ピンク=Carbon Tax(炭素税) 縦軸=10億米ドル 出所: 世界銀行 年次報告書 ※クリーンエネルギーレポート(毎週火曜日発行)では、「クリーンエネルギーをめぐる動き」として特集記事を掲載しています。 |