2023年の原油相場で注目された材料やイベントを振り返り、2024年相場をどう見るか。金融機関やシンクタンクのアナリスト、さらに独立系アナリストなど、多様な専門家の見方をまとめた。
2023年の原油相場について、「高止まりで小動き」と指摘したのは楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリスト(以下吉田氏)だ。2023年は石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」が減産方針を維持したことに加え、サウジアラビアが独自に日量100万バレルの減産、ロシアも日量50万バレルの輸出規制を断行。このような上昇圧力が常に存在していたため、原油相場は「高止まり」と形容した。
一方、2023年は欧米の複数金融機関の破綻、ゼロコロナ政策を終えた中国の経済減速、米国の債務上限問題など懸念材料も生じ、上値を抑制。結果的に「小動き」となったという。実際、昨年12月上旬時点のWTI原油年間変動幅は30ドル程度で、2022年の約半分だった。
エネルギー・金属鉱物資源機構の野神隆之首席エコノミスト(以下野神氏)も「持続的な下落局面はあまり見られず」とし、「総じて底堅く」推移したとまとめた。
また、原油相場は方向感が欠如していたとの総括も散見された。ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「多くの材料を巡って市場の思惑が揺れ動いた一年」とまとめた。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員(以下芥田氏)は、イスラエルとイスラム組織「ハマス」との戦争勃発やロシアとウクライナとの戦争など「地政学リスクに左右された」と分析。ただ、世界景気とともに「原油相場も方向感が出にくかった」と振り返る。
「原油需給よりも短期投機マネーの影響が大きかった」と語るのは、マーケットエッジの小菅努代表取締役(以下、小菅氏)だ。「ファンドの売買に振り回される場面が目立ち、オーバーシュート気味の価格形成が増えた」とし、従来以上に投機マネー動向が重視される地合いに変わりつつある印象が強まったという。
マーケットリスク・アドバイザリーの新村直弘共同代表(以下新村氏)は、米国景気の減速による原油価格の低下を当初から想定。ただ、想定よりも早い米国景気の底入れやOPECプラスの減産強化、中東情勢の緊張で「想定外に強含む局面があった」と指摘した。


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