新春特集=2024年LPG海外市場は供給懸念強く
2024年のLPG海外市場は、供給懸念が複数浮上している。ひとつは、パナマ運河における通峡制限。パナマ運河では昨夏、歴史的な渇水に見舞われたことから7月末から通峡制限が実施された。その後も水位が十分に回復していないため、パナマ運河庁は通峡予約枠を継続している。パナマ運河を通らず、スエズ運河経由や喜望峰経由の航路を選択するプレーヤーが増えると見込まれている。米国産カーゴの極東への到着が大幅に遅れることが予想され、極東における冬場の需要増や中国プレーヤーによる旧正月休暇前後の調達と重なった場合、極東着相場が跳ね上がる可能性がある、との観測も聞かれる。 パナマ運河の通峡制限はVLGC(大型LPG船)のフレート相場にも影響を与えており、2023年は相場が高騰した。通峡制限の強化でパナマ運河では滞船日数が増加した一方、スエズ運河を利用する船も漸増したことから、航海日数が全体的に増加し、船の供給が引き締まったためだ。通峡制限はパナマ運河が雨季を迎える5月ごろまで続くとの観測も聞かれており、フレート相場は高止まりが予想されている。23年12月積みからは、フレートコスト高から米国積みのターム玉の引き取りをキャンセルするプレーヤーが現れており、今後極東への供給がより一層減少する可能性もある。 中東産カーゴの供給でも懸念材料が聞かれる。中東産油国は石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」による協調減産の継続に加え、2024年1~3月に自主減産を実施することで合意した。さらに、一部の中東産ガス社は1月より定修を実施する予定。サウジアラムコのヤンブー基地では1月末~3月初め、クウェート国営石油(KPC)のミナアルアマディのガスプラントでは1~3月、アブダビ国営石油(ADNOC)のルワイス基地では2~3月にそれぞれ定修が予定されている。減産や定修により、1~3月の中東産LPGの供給が減少すると見込まれる。 一方、23年12月時点では、極東着市場における需給は緩いとの声が多く聞かれた。パナマ運河の通峡制限に伴い、米国産カーゴの供給が引き締まるとの観測やフレートコスト高で極東着相場が高騰。これを受け、中国のプロパン脱水素(PDH)プラントや石化会社の採算が悪化し、プラントの稼働率の低下や新規PDHプラントの立ち上げ遅れが発生した。これらの経営環境は変わらず、中国のプロパン需要は2024年も上向かない可能性があることから、供給懸念は強いものの、需給が引き締まるとは限らない、とみる向きもいる。 国内市場の供給においては、トラックドライバーの労働時間に制限が課せられる「2024年問題」が立ちはだかる。LPG業界でも昨夏ごろから、運送会社が2024年度からの値上げを通達しているもよう。これらの卸価格への転嫁が進むかどうかが国内市場の注目点になりそうだ。
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