新春特集=2024年もエチレンは低採算に、市場構造の変化続く
2023年は前年に続き、ナフサクラッカーなどの設備を操業する石油化学メーカーにとって厳しい事業環境が続いた。2024年も中国では新たな石油化学設備の稼働開始が見込まれ、輸入依存度は低下、エチレン相場は上値が重く低採算が続く見込みだ(表1)。今後の石化産業と取り巻く環境について以下にまとめた。
中国では2024年にも大型のエチレン設備が立ち上げを予定している(図1)。天津南港は中国石油化工(シノペック)とINEOSが折半出資し、年産120万トンのエチレン計画を進めている。立ち上げ後には天津石化が保有する同20万トンのエチレン設備は廃棄されるとみられる。エクソンモービルは同160万トンのエチレン設備を、万華化学は既存設備に加え、同120万トンのエチレン設備を建設している。 中国では2020年代後半にも大規模なエチレン設備が多く計画されている。すでに承認されているものもあり、石油化学製品の内製化率は一段と上昇する。製品によっては、既存の輸出メーカーが販売先を失うとみられる。 加えて、中国は多様な製品で存在感を増している。例えば、石油化学製品が多く使用される自動車産業は、中国メーカーが新エネルギー車で国内のみならず、輸出を本格化しており、自動車で使用される石油化学製品も中国産のシェアが拡大しつつある。
アジア諸国は中国へ多くのものを輸出してきたが、中国の石油化学および最終製品の産業強化により、中国向けの販売量は減少してきた。 こうした流れを受け、日本の石油化学メーカーはさらなる再編に臨んでいる。三菱ケミカルが、2021年12月に発表した経営方針において、石化・炭素事業のカーブアウトを打ち出した。三井化学は2023年11月の投資家説明会で、ナフサクラッカーについて能力の最適化および再編を検討すると盛り込んだほか、住友化学は2023年12月に構造改革などを担当する専門のチームを設置した。海外では、英シェルがシンガポールに保有する石油精製および石油化学のコンプレックスの売却を検討中だ。また、韓国のLG化学も2021年に稼働したナフサクラッカーの売却を検討しているとされる。2024年も需給構造の変化に応じた事業再編が進められそうだ。
中国以外でも新規石油化学設備の計画は多い。サウジアラムコは自社で開発したCrude-oil-to-chemicals(COTC)プロセスを開発した。石油化学製品を生産するうえで、ナフサを経由するよりもコストは安く、省エネルギーを実現する。韓国やサウジアラビアで同技術を採用した設備の建設を進めている。日本では廃プラスチック分解油、バイオマスナフサの活用が進んでいる。世界で環境対応を念頭に置いた投資の重要性が増している。
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