新春特集=2024年の電力市場、需給安定も燃料や原発などに不透明感
2024年の電力市場では、需給が安定的に推移する見通しとなっていることを受け、卸電力価格も落ち着いた値動きが続きそうだ。資源エネルギー庁は12月7日、2024年度の電力需給について見通しを発表。2024年度の夏季および冬季ともに、12月7日時点で全エリアとも10年に⼀度の厳しい暑さや寒さを想定した場合の需要に対して、安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる⾒通しとした。ただ、供給⼒として、運転開始後40年以上の⽼朽⽕⼒が約1割を占めていることなど一定のリスクがある。さらに、燃料相場や原発の稼働状況なども不確実性を高める要因として、その動向が注目される。 日本では、発電設備の中でもLNG火力が約3割を占めており、電力市場もLNGの需給動向に大きく左右される。こうした日本の事情を映し、政府は昨年11月に戦略的に余剰のLNGを確保することを発表した。産ガス国の想定外の設備トラブルや一時的な供給途絶に対しての警戒感は強く、2024年も予断を許さない状態が続く見通しとなっている。原油市場では、2024年に欧米や中国の経済成長が鈍化するとの見通しを受け、原油価格も上値の重い展開が続く見込みだが、中東情勢の動向次第では高値警戒感も依然として残る。発電用石炭では、世界的な脱炭素へのシフトが引き続き弱材料だが、相次ぐ閉山を受け供給そのものは減少している。このため、価格そのものは高値水準を維持する格好となっており、2024年も大幅な下落は期待できそうにない。 2024年に稼働が予定されている原子力発電所は、次の3基。九州電力の玄海3号機(118万kW、PWR、佐賀県玄海町)は、2024年2月下旬に再開する予定。同基は、定期検査のため稼働を停止している。また、中国電力の島根原発2号機(定格出力82万kW、BWR、島根県松江市)は、2024年8月に原子炉起動、9月に営業運転を再開する見通し。同基は2012年1月27日から定期点検に入って以来、12年7カ月ぶりの再稼働となる。東北電力の女川原子力発電所2号機(定格出力82万5,000kW、BWR、宮城県女川町)で行われている安全対策工事完了時期は、当初の23年11月から、24年2月に延期された。再稼働時期も、当初予定の来年2月から5月ごろになる見通し。 このほか、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所は、2023年12月4日にテロ対策不備を巡る追加検査を終えた。2021年4月に原子力規制委員会から事実上の運転禁止命令が出されている。 2024年も電力先物取引は活況が続きそうだ。今冬は需給逼迫懸念が後退しているものの、ウクライナ戦争の長期化や中東情勢の緊迫化を背景に、LNGや原油といった主要な燃料相場の先行き動向に不透明感が根強く、電力の価格変動をリスクヘッジする動きが活発化するとみられる。欧州エネルギー取引所(EEX)は2023年6月以降、従来の月間物や四半期物などに加え、日次物や週末物を商品ラインアップに追加。幅広いヘッジニーズへの対応が可能となった。東京商品取引所(TOCOM)では24年に、週間物の上場を計画しており、新規取引への参入が増えれば流動性が向上する公算が大きい。
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